カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼13日目② カミーノでは毎日、すべてが美しいんだよ

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巡礼13日目② タルダホス

 

サンチャゴ・コンポステーラへ至る巡礼ルートは幾つかある。

北スペインを海沿いに進む「北の道」、リスボンから始まる「ポルトガルの道」。

フランスからはル・ピュイ・アン・ヴレを基点とする「ル・ピュイの道」など。

 

私が歩いたのは、もっともポピュラーな「フランス人の道」。

スペインとの国境近くのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーを基点とする。

このルートは巡礼に関する情報も多く出ており、アルベルゲも充実している。

初心者には一番オススメの道だと思う。

 

 

さて、イヴと一緒にブルゴスを出てタルダホスへ行く途中、

向こうから道を戻ってくる、背の高いフランス人の巡礼に出会った。

そのムッシューはなんと・・・ローマから歩いているという!

 

ローマからフランスへ入り「アルルの道」「北の道」を経由してサンチャゴへ。

その後「フランス人の道」を引き返してローマまで戻る途中なのだそうだ!

イヴもヴェズレーから歩いている結構なツワモノだが、

ローマから歩いて往復するなんて、巡礼=人生ではないか!

 

「シャポー!」と、イヴが帽子を脱ぐジェスチャーをした。

  

ツワモノ「北の道の景観は素晴らしかった。高低差は激しいが行く価値はある」

イヴ  「次のカミーノでは是非行きたいね」

ツワモノ「巡礼者は少ないから静かに歩ける。スペインの海は実にいい」

わたし 「あなたは素晴らしい旅をしていますね」

ツワモノ「君も。カミーノでは毎日、すべてが美しいんだよ」彼は答えた。

  

「ブエン・カミーノ!」 私たちはハグをして、手を振って別れた。

 

 

タルダホスのアルベルゲは、今期オープンしたばかりだった。

ほとんどの巡礼はブルゴスで泊まるから、宿泊者はその日私たち二人だけ。

寄付制の宿で、夕食はないが朝食が出るという。

オスピタレイロはとても親切で、奥さんはフランス人だった。

またしてもフランス語が話せると、イヴは大喜び。

私もカタコトで参戦。スペインでフランス語短期留学だ。

 

 

夜8時。イヴと一緒にバールでディナーを食べながら話した。

イヴはアルピニストでたくさんの雪山登山を経験していると語った。

親しい友人とスキーをしたり、マウンテンバイクで旅したりしてきたそうだ。

 

不思議な感じだった。

昨日あったばかりのフランス人と、差し向かいで二人で食事していた。

しかもこの上もなくお互いに、リラックスしていた。

カミーノの魔法のようだった。

 

 

翌朝7時半。アルベルゲで朝食。

テーブルにはたくさんの種類のジャムと、パンとミルクが用意されていた。

もちろんコーヒーも、サラダもペンネもあった。

私たち二人のために、オスピタレイロが用意してくれたのだった。

この先の道についても、色々な情報を彼らはくれた。

この宿に泊まれて、本当に良かったと思った。

 

オスピタレイロが食事をしながら私にきいた。

「日本には熊野という巡礼道がある。君は知ってる?」

「知ってる!熊野古道!私、歩いた!」

「おー!・・・美しい道だよね。ぼくらもいつか歩いてみたいと思ってるんだ」

オスピタレイロと奥さんが、顔を見合わせて笑った。

 

 

出発前、寄付をする箱の中にお金を入れる際、イヴが言った。

「ぼくは20ユーロ入れるよ。彼らはとても親切だったから」

その金額に、私は少しびっくりした。

 

アルベルゲの金額は平均して5ユーロから10ユーロくらいだ。

ホテルやペンションと違ってとても安い。

とくに寄付制の宿は、金額は巡礼者の気持ち次第。

そんなに多く払わない巡礼も多いのだ。

 

イヴは自炊ばかりしていたから、てっきりケチなのかと思っていた。(失礼〜)

でも、そうではなかった。

何に自分がお金をかけたいか、その美学をちゃんと持っているのだった。

 

私はイブとこの日も一緒に、カミーノを歩くことにした。

 

 

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