カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼16日目② ウルトレーヤ!

 

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巡礼16日目② カリヨン・デ・ロス・コンデス

 

ペリグリーノ・ミーティングにて。

三人のシスターが楽器を奏でて、配布されたプリントの歌をみんなで歌った。

スペイン語の歌、英語の歌、フランス語の歌。

それから順番に自己紹介をした。

巡礼している理由も簡単に話すように言われた。

 

最初に韓国人夫婦が話した。

自己紹介の後、韓国の歌をみんなに歌ってきかせて、とシスターが頼んだ。

彼らが戸惑っていると、シスターは「アリラン」を歌い出した。

もちろん韓国語でだ。

 

三人のシスターが奏でる美しい「アリラン」に、韓国人夫婦は感動していた。

シスターたちと一緒に、私も歌った。

アリラン」は、ヨーロッパ人たちは知らないようだった。

 

ミーティングにはイヴもY君もいなかったが、ミニヨンはいた。

ミニヨンも自己紹介をした。

巡礼に出た理由を彼女も話したが、私には言葉が難しくてわからなかった。

けれどミニヨンの心がふるえているのは伝わった。

いつもズケズケ喋るミニヨンの、ナイーヴな一面に触れた気がした。

 

そして私の番になった。英語でスピーチ、がんばれ私!

「マイネームイズ・ミッキー。ミッキーマウス・ミッキー!」

・・・大爆笑された。

カミーノを歩いている理由も、説明できなかったのでこう言った。

「カミーノ・コーリング・ミー!」

・・・やっぱり大爆笑された。

 

シスターが、日本の歌をきかせて的なことを(きれいな英語で)私に言った。

え? と聞き返すとミニヨンが(乱暴な英語で)通訳してくれた。

 

ミニヨン「あんた一人で歌えって言ってんだよッ!」

わたし 「あ、あ、attendez un moment!(ちょっと待って)」←なぜかフランス語

シスター「じゃあ、私たちが日本の歌を一曲歌うから、そのあとで歌ってね」

 

そう言って、シスターたちは日本語で讃美歌を歌い出した。

聞いたことのない、フォークソングっぽい讃美歌だった。

その美しい発音に、ぶわっと鳥肌が立った。 

 

♪「イエスさま私に いつでも笑顔を あふれる感謝を ゆるせる心を

  どんな時でも どんな人にも 与える愛を 愛をください」

 

感動してうるうるしていると、ミキの番だよ、と促された。

立ち上がって大声で私は歌った。

ものすごいボルテージで絶唱したのは、北原白秋の「この道」・・・。

 

♪「この道は いつか来た道 ああそうだよ アカシアの花が咲いてた」

 

拍手喝采、されてしまった。

 

「あなたの歌は情熱的で良かった」

「ミッキーの歌はパワフルだった」 

 

いろんな人に言われたから、相当パッショネイトだったのだと思う。

どう考えても叙情で、パンクな歌じゃないのに・・・。

この日以降、名前もすっかり覚えられてしまった(当たり前か)。

 

 

ミーティングで最後に歌ったのは、巡礼者の歌「ウルトレーヤ!」だ。

「ウルトレーヤ」とは、勇気を持って前進せよ、という意味の言葉らしい。

みんなで声をあわせて歌っているうちに、涙が出てきた。

 

韓国人も、日本人も、スペイン人も、イタリア人も、フランス人も、

アメリカ人も、オランダ人も、ドイツ人も、イスラエル人も、

みんなみんな、同じ歌を一緒に歌っていた。歌いながら涙ぐんでいた。

 

一人一人の巡礼に旅に出た理由があり、一人一人の心に「ウルトレーヤ」は響いた。

 

シスターはみんなに祝福のハグをした。

手作りの「六芒星」のチャームもくれた。

その、紙で作ったチャームを私は、巡礼中ずっと大切に持っていた。 

 

ねえシスター、いまでも私は持っているんだよ、あの六芒星

これを見るとあの日の歌声と、ミニヨンの泣きべそを思い出すんだ。

 

ミニヨン、いまどうしてる?

英語がわからない私に、英語で通訳してくれたミニヨン。

ズケズケ喋るミニヨン。

足にマメが10個あってバスで巡礼していた、ミニヨン。

あなたの乱暴な英語は、私にとてもやさしかったよ。

 

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