カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼21日目③ Merci beaucoup pour aujourd'hui(今日もどうもありがとう)

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巡礼21日目③ サンタ・カタリーナ・デ・ソモサ

 

「夕食は僕が払うよ」

 

イヴが(フランス語で)そう言った。

 

サンタ・カタリーナのアルベルゲはレストランを兼ねていた。

44キロ歩いて、このアルベルゲに辿り着いたとき、もう私はくたくただった。

いつもならルーティンのシャワーと洗濯のあと散歩するのだが、この日はダウン。

ベッドに倒れ込んで仮眠をとった。

 

19時半。イヴに起こしてもらってアルベルゲのレストランへ。

ペリグリーノ・メニューはすでに予約済み。

疲れていたけれど、眠ったせいか、私は元気になっていた。

珍しくお酒が、サングリアが飲みたかった。

 

アグアとヴィーノ(水とワイン)どっちにするかと店のオヤジに聞かれた。

「サングリア」と私は頭の中で思った。

するとイヴが言った。

 

イヴ 「サングリア飲む?」

わたし「ひえええええ〜! なんでわかるの〜? まだ口に出してないのに〜!」

  

で、サングリアを頼んだら、でっかいフルーツポンチみたいなのが出てきた。

甘くて満足だったが、イヴ的にはチープでいまいちだったようだ。

 

プリメロ(第一皿)はスープを。セグンド(第二皿)は魚をいただいた。 

ポストレ(デザート)はティラミスかチーズケーキの二択で、私たちは後者を選んだ。

これが・・・絶品だった。

チーズが濃厚で良質だからだろうとイヴと言いあった。

 

あまりに美味しかったので、私はそのことを店のオヤジに伝えたかった。

オヤジは英語ができなかったので、スペイン語で伝えるしかない。

iPhoneGoogle翻訳をして、訳した文章をオヤジに見せた。

 

「チーズケーキ、今まで食べた中で一番おいしかった!」

 

iPhoneをぐっと自分の目に近づけて、オヤジはそれを読み、笑った。

 

 

食事を終えて部屋に戻ると、入口に私のシューズが乾かされていた。

きちんと中敷を外に出してくれている。

私が寝ている間に、イヴがやってくれたのだ。

大きなイヴの靴と小さな私の靴。そしてその横には新しい杖があった。

 

そうだ。今日は杖をゲットして、44キロも歩いたのだ。

44という数字を聞いたときは、フランス語を聞き間違えたかと思った。

でもイヴの万歩計は確かに44キロを示していた。

ひとりで歩いていた頃は30キロも歩けないと思っていたのに・・・。

結局のところ制限とは、自分でそう信じているだけのものなのだ。

 

私は改めてイヴにお礼を言いたかった。きちんとフランス語で伝えたかった。

店のオヤジに見せたように、Googleでフランス語の翻訳を見せるのは簡単だった。

でもイヴはその機能をあまり好ましく思っていないようだった。

以前見せたとき、これ中国語?と返されたこともある。(フランス語なのに!)

だから私は自分の知っている単語と、気持ちで、伝えることにした。

 

 「Merci beaucoup pour aujourd'hui(今日もどうもありがとう)」

 

イヴは嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が嬉しくて、私も笑った。

 

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