カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼23日目① ポンと山越えてポンフェラーダ! 僕は鳥になって飛んでいこう。

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巡礼23日目① リエゴ・デ・アンブロス → カンポナラジャ

 

暗い山道に鳥の声だけがしていた。急峻な下り坂が続いた。

岩場のようなところを降りたり、木々をかき分けたり。

一人しか進めない細い道では、私が先に行き、イヴが後に続いた。

 

手袋をしていない指先は凍えそうだったが、額は汗をかいていた。

私たちは転ばないよう慎重に、黙々と歩いた。

朝がゆっくりあけるころ、山裾にポンフェラーダの町が見えた。

 

わたし「(日本語で)ポンと山越えてポンフェラーダ!(ジャンプする)」

イヴ 「(フランス語で)僕は鳥になって飛んでいこう(翼を広げるポーズ)」

      二人、笑う。

わたし「(フランス語で)あ、今日は私は・・・」

イヴ 「君はヨーグルトを買うんだろう」

わたし「(日本語で)なんでわかるの、まだ何にも言ってないのに!」

 

 

ポンフェラーダは大きな町だった。

人も車も多く、お土産屋や魔法グッズのようなものを売ってる店もあった。

そして町の中心にはお城が建っていた。

 

ヨーグルト(1ℓ)も欲しかったけど、私は手袋と薬が欲しかった。

山の朝は寒かったから、私の指はひどいしもやけになっていたのだ。

それから銀行にも行きたかった。小額のユーロを補充する必要があった。

この町にはサンタンデールがある。大きな銀行のATMなら安心だと思った。

 

わたし「1、手袋 2、ファルマシア(薬局) 3、サンタンデール 4、ヨーグルト」

イヴ 「4は荷物になるから最後だ」

わたし「3の銀行に最初に行きたい」

イヴ 「その前に休憩だ」

 

私とイヴはチョコラテリアに入った。

青山とか表参道辺りに出店すれば人気が出そうな洒落たチョコラテリアだ。

いつか食べてみたいと狙っていた「チョコラテ・コン・チュロス」を注文。

甘みで疲れがいっぺんに吹き飛んだ。イヴも満足そうだった。

 

チョコラテリアを出て、お城へ行った。

中は博物館のようになっていて、そこそこの入場料を取るようだった。

私とイヴは「どうする?」と顔を見合わせ、見学をやめた。

さあ、それじゃあ銀行だ。どこにあるのだろう?

 

私たちがきょろきょろしながらガイドブックを広げていると、一人の男性がやってきた。

片手に新聞を持っている。ローカルの人だ。

 

男性 「(英語で)何かお探しですか?」

イヴ 「(フランス語で)サンタンデールの銀行はどこですか?」

男性 「・・・?」

わたし「バンコ。ドンデエスタ・バンコ・サンタンデール」←なんちゃってスペイン語

男性 「(理解して。英語で)案内しましょう(と、歩き出す)」

わたし「(日本語で)え、連れてってくれるの? グラシアース!」

 

無事にサンタンデールに到着。現金を引き出した。

私たちは親切な男性に感謝して別れ、ファルマシアへ行った。

店に入る前、私はメモしておいたスペイン語を復習した。

 

わたし「(指を見せて)テンゴ・ドロール(痛みがあります)」

薬屋 「(スペイン語で)どこでこの症状になりましたか?」←と、きこえた

わたし「(ふるえるジェスチャーしつつ)モンターニャ!(山!)」

薬屋 「・・・・・・」

       間

薬屋 「(大と小、二つの塗り薬を出して)どちらにしますか?」←と、きこえた

わたし「(指さして日本語で)こっち!」

薬屋 「(見せて)こっち?」

わたし「Si!Si!」

 

見事に薬もゲットした。次は手袋だ。

だが売っている店が見当たらない。

私たちはもう一度、黄色い矢印のある巡礼道に引き返した。

 

お城の近くの広場に、教会があった。私たちは中に入った。

ちょうどミサの時間だったらしく、たくさんの人がいた。

私たちはリュックを背負ったまま、一番後ろに参列した。

 

ミサの時間は30分だ。終わり近くに隣人と手をとりあい、平和の挨拶をする。

私とイヴもローカルの信者たちと笑顔で挨拶した。

と、そこに、さっき銀行に案内してくれた男性の姿をみつけた。

嬉しくなって、互いに笑顔で握手した。

 

聖体拝領の列に並ぶとき、イヴは私に「行っていい?」ときいた。

私は手で「どうぞ」と促した。

私たち以外のペリグリーノも、カトリック教徒はみな並んで祝福をうけていた。

ただ信者でない私だけ、リュックを背負ったまま、その場に立っていた。

 

「Merci beaucoup」

 

戻って来たイヴが私に言った。その声には熱があった。

イヴはもしかしたらずっと、ミサに参列したかったのかもしれない。

無宗教の私にはわからない、何かを感じた。

親切なスペイン男性ともう一度別れの挨拶をして、私たちは教会を後にした。

  

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わたし「イヴ、今日はどこまで歩く?」

イヴ 「(即答して)Camponaraya」

わたし「(地図を見て)カンポナラジャ? 近くない? すぐ着くよ」

イヴ 「ここ数日、僕たちはたくさん歩きすぎている。今日は早めに休もう」

 

もっともな意見だった。とはいえ、まだ9.5キロある。

 

わたし「(日本語で)じゃ、ヨーグルトを買っていこう」

 

私たちはメインストリートを抜け、川沿いの道をまっすぐに歩き出した。

 

 

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