巡礼36日目① 「さあ、海へいくよ」
巡礼36日目① オ・ロゴソ → フィステーラ
バールも何もない山道をしばらく歩くと、ネベの聖母教会がこつ然と現れた。
古い時代の精霊が語りかけてくるような風情の教会。
やさしい水のエネルギーを感じた。
それからまた静かな道を歩いた。
ペリグリーノは私たち以外誰もいない。
イヴがガイドブックを見て言った。
「この先に湧き水がある。水を汲んでいこう」
イヴの持っているガイドブック『Miam Miam do do』には泉の場所も記されている。
このフランス語の本は地図もとても細かく、情報も詳細なのだ。
アルベルゲで使える言語まで書いてある。ただし、分厚くて重い・・・。
しばらく進むと道が二つに分かれ、矢印が立っていた。
ルートから外れた方の道を行くと、泉のある教会に出た。
サン・ペドロ・マルティールの教会。
泉の水は冷たくておいしかった。ペットボトルにいっぱい汲んだ。
この教会もかなり古いエネルギーを感じた。
キリスト教が入ってくる前の、ケルト人が聖地とした場所の名残だろうか。
ドルイドとカソリックが融合したような、ガリシア州独特の土着的な神聖さがあった。
さらにしばらく歩くと、山道が開けて、空の向こうに青い海が見えた。
イヴ 「海だよ」
わたし「・・・海だ」
間
わたし「ビヤントー(もうすぐだ)」
イヴ 「ビヤントー」
サンチャゴ到着の時は感動しなかったのに、海が見えたらすぐ心が動いた。
イヴが私を持ち上げて、大きな岩の上にのせた。
青い海が見えた。・・・感動した。
左に海を見ながら道を降りていくと、ほどなくCeeの町に出た。
私たちは郵便局へ行って絵ハガキを出し、それからカフェに入った。
甘いドリンクとトーストとクロワッサン。
フィステーラはもうすぐそこだ。ゆっくり食べて、ゆっくりいこう。
白い砂浜を過ぎて行く。
ファロ(灯台)まで3キロ。
0,00kmのモホン。
フィステーラ到着。
モホンの前に、ビラセリオのアルベルゲで女の子と喋っていたコリヤンボーイがいた。
私たちより早く到着したようだ。
挨拶すると、とびっきりの笑顔で手を振り返してくれた。
「さあ、海へいくよ」
イヴが岩場を降りて行く。
私もついていく。
海風にあおられて、帽子がとばされそうだった。
トレッキング・シューズを脱いで、早く裸足になりたかった。