巡礼40日目 ルルド二日目
アベマリアの歌声が昨夜から耳に残っていた。
朝。沐浴場の前で、ギターの演奏に合わせて歌われる讃美歌だ。
ドキドキしながら沐浴の列に並び、浴場のカーテンの中に入る。
シスターから英語で指示を受け、衣服を脱ぐ。
水の中に入るのは一瞬だ。
マリア様に祈ってから、二人のシスターに支えられてザブンと入った。
水から出ると、体がほかほかしていた。
少女のようなシスターが、私の足に靴下をはかせてくれた。
五本指ソックスの指を一本一本ていねいに裏返して。
その優しさに心から感動してしまった。
聖堂のそばにはミニ巡礼道。Chemin de croix des Espélugues。
そしてそこに、聖母出現のマサビエル洞窟ではない、もう一つの洞窟があった。
私にとってはもっとも魅かれる場所だった。不思議な光が写真に写った。
ベルナデッタの生家では、TGVで隣だったベトナム人の家族と再会。
マルグリット・デュラスを思わせるお婆さんは、私をまじまじと見て微笑んだ。
この日も夜はキャンドル行進に参加。
アヴェ・アヴェ・アヴェマリア・・・。歌が頭から離れない。
流れ続けるガーヴ・ド・ポー川の清らかさ。
スペインのおおらかさとは違う、フランス独特の空気の繊細さ。
大きな声で言いたかった。
世界は美しい!
ここにこうして書くことが未来に約束されていたから、私はそこへ行った。
今、私はそんな気がしている。
そしてここにこうして書くことも、なにかしら未来につながっているのだ。
ありがとうございます。