カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape5  Saint-Alban sur Limagole ~ Les Quatre-Chemins

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Etape5 Saint-Alban sur Limagole ~ Les Quatre-Chemins  27km

 

牛の糞の匂いがしてくると、人の住む村が近いとわかる。

ずっと一人で歩いていると、村が近づくのが嬉しい。

牛の糞の匂いが、なぜか嬉しい。

 

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スペイン巡礼のときは、必ず誰かに会っていた。

前を歩くペリグリーノ、後ろから来るペリグリーノ。

そして交わす挨拶、「ブエン・カミーノ !」

 

でも今回は違う。

4月頭のルピュイの道では、一日歩いていて会うのは一人か二人くらいだ。

だから早く、宿に着きたい、誰かと会って話したいと思うのだった。

 

でもこの日は特別。

カトルシュマン(Quatre-Chemins)の宿で、

ドイツ人のおばあちゃん巡礼、ウルリケと合流する約束をしていたのだ。

だからだろう、私は宿の予約をしていなかったけど強気で歩いていた。

 

Les Estrets 

 

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小さな村の見過ごしそうな一隅に教会があった。

いや、よく見ると教会(Chapelle)じゃない。

そこは聖堂(Eglise)。
 

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                    L'église Saint-Jean-Baptiste  (Les Estrets)

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ルピュイの道には、ロマネスク様式の小さな聖堂や教会が多い。

いずれもステンドグラスが美しく、心が洗われる。

 

Aumont-Aubrac

 

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歩いて15km超えた頃、Aumont-Aubracに到着。

オブラック牛で有名な、鉄道駅のある大きな町だ。

名物料理の伸びるチーズも魅力的。

でも私はあまりお腹が空いていなかったのでエピスリーで果物とパンを購入。

チーズとハムを挟んで、お店の前のベンチで食べた。

 

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ジェヴォーダンの獣(伝説のオオカミ)はこの町でも健在。

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オブラックのサンテティエンヌ聖堂。

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                                            L'église Saint Etienne

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そしてオブラック牛。ゆるキャラっぽい・・・。

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 La chaze de Peyre

 

オブラックを過ぎると、La chaze de Peyreという集落に出た。

フランス語のカタカナ読みがわからない。ラ・シャズ・ドゥ・ペール?

 

調べてみたところ、この言葉はオック語(中世フランスの方言)なのだった。

 

En occitan, peyre signifie « pierre ». La chaze de Peyre signifie « la maison de pierre ».

オック語で「peyre」は「pierre(石)」「chaze」は「maison(家)」の意。

つまりこの地名は「石の家」という意味らしい。

 

花崗岩の鐘楼が美しい「石の家」にある聖堂は、12世紀に建てられたもの。

 

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L'église de La Chaze de Peyre

 

La chapelle de Bastide

 

さらにこの日はもう一つの可愛らしい教会に出会った。

バスティッド教会。

道の分岐点の真ん中に立つ、小さな正方形の教会だ。

扉が開いて中に入った時、体も心もほっとしてゆるんだ。

 

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聖サレットと羊飼いの子供たち。(La Vierge de la Salette avec des petits bergers)

伝承によると、1846年9月19日。

幼い羊飼いの少年少女は、光輪とともに出現したこの聖女を幻視したという。

 

Les Quatre-Chemins

 

教会を過ぎて間もなく、目的の宿に到着。

宿の名前は『Aux Quatre Vents』。清潔できれいな宿。設備も充実。

オーナーのマリは親切で、料理も美味しかった。

 

夕方近くにウルリケが合流。

宿泊した巡礼は私たち二人だけ。

 

マリ  「明日はどこまで行くの?」

わたし 「Aubrac。宿の予約お願いできますか?」

ウルリケ「予約なんかしなくて平気よ〜」

マリ  「あそこは大きい宿だから絶対泊まれるわ」

 

f:id:parasuatena2005:20191221222920j:plain ウルリケとマリ

 

しかしこれがマズかった。

やはり予約しておくべきだったと後悔したのは翌日のこと。

(宿はクローズで私は放り出されてしまうのだ)

でもこの時は、予約しなくても平気だとタカを括っていた。

 

一般に、ガイドブックにオープンと書いてあっても開いていない宿は多い。

ハイシーズンには巡礼があふれて泊まれないことも多いようだが、

それ以上にローシーズンは予告なくクローズしているからおそろしい。

しかも私のガイドブックは薄手のミシュランだったので情報も薄かった。

 

「ルピュイの道」のガイドブックは『Miam Miam Dodo』に限ります! 

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この宿もハイシーズンには大人気らしかった。

毎年ここに来るリピーターもいるという。

5月末から10月にかけての予約はもうかなり入っているとマリは言っていた。

それからマリは私たちに戸締りを託し、車で家に帰った。

 

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ウルリケがパジャマに着替える際、胸元にクロスが見えたので聞いてみた。

 

わたし 「ウルリケはクリスチャン?」

ウルリケ「そうよ」

わたし 「カトリック?」

ウルリケ「プロテスタント。子供の頃はカトリックだったけどね」

 

と、ウルリケはポケットからもう一つの十字架を見せた。

タウ十字だった。

 

わたし 「タウだ。アッシジのフランチェスコ

ウルリケ「そう、フランチェスコ

わたし 「アッシジ行った?」

ウルリケ「もちろん」

わたし 「私も! 素晴らしかった!」

 

旅の話で盛り上がり、その後しばらくフランス語でお互いの話をした。

 

ウルリケは数年ごとに、セクションで区切って巡礼をしているという。

今回の最終目的地はカオール。

 

旦那とは離婚して、息子が二人いる。ドイツ国内に住んでいる。

息子たちはシュタイナー教育で育てたそうだ。

以前、南アフリカで餓えた子供たちを援助する仕事をしていた。

だから巡礼に行く際も、旅費で救える子供がいると思うと胸が痛んだという。

 

「でも、行きたいと思ったからね。私はいつも自分の気持ちを尊重するの」

 

それから、ウルリケは歌い出した。

歌いながら、軽やかに、ゆっくりと踊り始めた。

 

わたし 「・・・そのムーヴメント、なに?」

ウルリケ「オイリュトミー」

わたし 「シュタイナーの?」

ウルリケ「よく知ってるわね〜、MIKI。オイリュトミーは日本でも有名なの?」

わたし 「よくわからない。でもシュタイナーは有名だと思う」

 

私も少しだけ教わって、しばらく一緒に踊った。

二人以外誰もいないから、なんの気兼ねもいらない。

不思議な、陽気な、平和な夜だった。

 

翌日があんな猛吹雪になるなんて、この時点で私たちは思ってもいなかった。

 

www.tourisme-occitanie.com

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