カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼2日目 Moissac → Auvillar

 

 

川沿いの道をしばらく歩いてから橋を渡り、山道に入る。

なだらかな丘が続いた。

マシップという集落を過ぎたころ、聖ローズ教会が見えてきた。

残念ながら扉は閉まっていたけれど、そこから見える景色は素晴らしかった。

 

 

マローズという小さな村でお昼休憩。

パン屋の前にも美しい聖堂があった。

 

 

また丘の道へを進み、小さな町をいくつか通る。

誰にも会わない。

丘を黄色で埋め尽くす一面のコルザ(菜の花)。

 

 

ガロンヌ川を渡ってから、驚くほど急な坂を登り切ると、

やっと目の前に、オヴィラールの村が現れた。

 

Auvillar

「この村はとても小さいから、すぐに見て回ることができます」

観光案内所の若い女の子が笑顔でそう言った。

オヴィラールは「フランスの最も美しい村」の一つ。

美しい円形市場と時計塔。そして美しい教会がある。

 

 

                Eglise Saint-Pierre

 

LIttle India

この日の宿は「リトル・インディア」。

他の宿が全てクローズしていて、ここしか泊まることが出来なかった。

でも予定外の出来事には予想外の喜びがあるものだ。

 

一番乗りで到着すると、

フランス人のイヴァンとインド人のラクシュミーが笑顔で迎えてくれた。

私がウェルカム・ドリンクのミント水をいただいていると、

イヴァンがいきなり黒い室内ばきを私に差し出してこう言った。

 

「数日前に来た日本の女の子が室内ばきを忘れていったんだ」

「でも彼女の連絡先を僕は知らない。だから返せないんだよ」

「君も足が小さいみたいだから、この靴が合うならもらってよ」

 

履いてみると、ピッタリだった。

この日は、ありがたくその靴を履いて過ごした。

 

奥さんのラクシュミーはフランス語がとてもうまい。

インド料理の夕食をいただいた後、

ラクシュミーの話を、その日集まった8人の巡礼者が傾聴した。

ほとんどわからなかったけど、心に触れるものがあった。

私は折り鶴を二人にプレゼントした。

 

ガネーシャやインドの装飾品で溢れた室内は、まさにインド。

私はサイババに見つめられながら、ゆっくり眠ることができた。

 

 

巡礼1日目 Moissac

 

トゥールーズから列車で1時間、5ユーロという安さでモワサックヘ。

駅を降りると懐かしい街並み。一度でも来たことがある場所は安心感がある。

 

モワサックは7年前の巡礼の到着地であり、今回の出発地だ。

薔薇色のレンガと白い石の壁でできた街並みは変わっていない。

また来たよ、モワサック! 自然と胸が高鳴った。

 

11時。Gîte(宿)が開くのは15時だから時間がある。

観光案内所にバックパックを預けてcentre-ville(街の中心部)へ。

まずは私の大好きな回廊がある、サン・ピエール修道院へ!

 

 

 

だが、世界遺産の回廊は、まさかのクローズだった。

シーズンオフだからだろう。開館は14時からになっていた。

しょうがない。それまで町を散策することにした。

 

7年前はもっと活気があって賑わっていて、いろんな店が開いていた。

私は修道院附属の店で買い物をした。

でもその店も、見当たらなかった。

 

14時。開館直後に回廊へ入り、ゆっくりと見て回った。

柱に刻まれた聖書の登場人物たちが愛おしい。

じっと見ていると声が聞こえてくるようだ。

たっぷり時間があったので、映像やパネル展示もじっくり見て堪能した。

 

 

 

15時過ぎ。予約していたGîteへ。

美しく清潔なその宿には、聡明な女性オーナーがいた。

元フランス語教師のヴェロニック。

彼女は私のつたないフランス語のレベルに合わせて話をしてくれた。

 

ルピュイの道の巡礼シーズンは4月半ばから。

3月下旬では、観光案内所や聖堂も閉まっているところが多い。

宿泊施設もそうだ。

ガイドブックやHPにオープンと書いてあっても、

連絡すると、ほとんどの宿がクローズといわれてしまう。

その話をするとヴェロニックはこう言った。

 

「巡礼者を迎えるための宿なのだから、開いてないのはおかしい」

 

上海でフランス語を教えて、それから世界各国を回ったという彼女は、

日本にも数カ月間、滞在したことがあるという。

大好きな日本映画は『楢山節考』、能や歌舞伎も好きだと言っていた。

日本にいた頃、流行っていた喜太郎のシンセサイザー音楽に傾倒し、

今でも時々聴いてるの、と言って、食事中に流してくれた。

薪ストーブの暖かな室内に、ノスタルジックな電子音楽が奇妙に合った。

 

整った部屋のあちこちには、高価なアジアの家具が置かれていたし、

居心地の良い書斎には、図書館ができるほどの本が並んでいた。

ヴェロニックの歴史が、そのまま空間にあらわれていた。

それは気品があると同時に、親しみやすいものだった。

 

彼女の子供たちは独立し、今は一人だけでGîteを経営している。

ハンディキャップを持った巡礼者のサポートもしていると言っていた。

 

「私は65才。一人で大変なこともある」

「でも自分の選択したことだから、やるわ」

 

淡々と語る横顔が、美しかった。

 

 

夜、私はトゥールーズで買ったガイドブックを熟読した。

明日はAuvillarまで歩くのだ。

モワサックから先へ行く道は2パターン。

丘の道と、川沿いの平坦な道がある。

私は丘の道を選んだ。途中にある教会に行きたかったからだ。

 

翌朝、外はいい天気だった。

ヴェロニックに見送られ、私の巡礼1日目が始まった。

 

 

2026春 ルピュイの道 巡礼 

「その道を行け」


 

もう二度と会うことがない人と

今日もどこかでめぐりあう

 

こんにちは よい旅を! と挨拶を交わし

すれちがう その繰り返し

 

道はどこまでものびている

行きたいところまで 歩く

 

「サンチャゴに行ってきたんだ、帰るところだよ」

途上で出会ったイタリア人の巡礼は 明るい笑顔で言った

ローマから歩き始めて

スペインのサンチャゴ・コンポステーラまで

そして今 フランスの巡礼道を経て ローマへ帰る途中だと言う

笑顔がすてきだった

 

7年ぶりの巡礼は、痛みを伴って終わった

私は足を負傷し、最終的には車椅子で帰国した・・・

でも、それでも、世界は美しかった!

 

 

歩いた道は体に残る

足の裏は地面としゃべる

私は土地と混じりあう

 

風が吹く

舞い上がるタンポポの綿帽子

一面のコルザ(菜の花)がなびく その向こう

星座が一斉に動いたように飛ぶ 渡り鳥

 

風が言う

同じ景色なんて二度とないのに、同じものなんてありえないのに

どうして古い記憶の鎖を巻き付けて お前はまだ歩いているの

 

泣きたくなるほど

美しい瞬間に 出会ってしまうから

世界が本当に美しいのだと 知ってしまうから

巡礼の旅は終われない

 

道をまちがえて迷うこともある

でも何を基準に「まちがい」だと言うの

たどってきた道筋は軌跡にすぎない

すべてかけがえのない私だけの道なのに

 

それでいい 大丈夫 その道を行け

 

とらわれてばかりの 思い込みの束を

ちぎってとばせ 風!

 

 

私はこの星の巡礼

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カミーノを歩いているように毎日を歩く

 

ふと気がつくと、日常こそが巡礼なのだった。

カミーノを歩く何人かは、自宅のドアからが巡礼だと言っていた。

彼らは帰ってからも日常という巡礼を続けている。

 

ベルギーから歩いていたイヴォンヌとクロディーヌ。

二人は2200キロ歩いたその記録を本にまとめて出版したそうだ。

Publier un livre avec Le Livre en papier - Pas à pas vers Saint-Jacques de Compostelle

ルピュイの大聖堂で初めて出会って、ロカマドールへ行く途中でまた会った二人。

2200キロも歩いていたんだね!

 

聖地へ向かうことだけが巡礼じゃない。

日常の中に聖地を見出すこと。

美しいものは世界に溢れている。

感謝すべきものはそこら中に満ちている。

 

大いなる巡りの中で、今日も私たちは生かされている。

毎日ありがとう。

 

Etape25 Lauzerte ~ Moissac

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Etape 25 Lauzerte ~ Moissac 27km

 

この日はさすがにたくさんの巡礼とすれ違った。

昨日のイースターに続き、Lundi de Paqueでまた祝日。

前を歩いていたのはインド人の女の子巡礼。(フランス国籍

ロゼルトの宿で一緒だった学生で、8月に日本に行くと言っていた。

 

東京を観光するのに何日見込めばいいか。

夕食の時、彼女に聞かれたが、一日でいいと私は答えた。

それより京都に行ったほうがいいよ。東京は人も多いしうるさいから。

「KYOTO」と彼女は繰り返した。

 

Chapelie St-Sernin du-Bosc

 

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道の途上に、素朴だが可愛い教会がポッカリと現れた。

サン・セルナンの教会。

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そしてまた緑と土の匂いのする巡礼道を行く。

 

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休憩所の前後で、何人かの巡礼とすれ違いながら挨拶を交わした。

みんなモワサックより先に行くようだった。

でも私の今年の巡礼は、今日終わる。

ゆっくりゆっくり歩こうと思った。

 

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Chapelle d'Espis

 

デスピスの教会は閉まっていた。残念。

聖母マリアが幼い少年の前に何度も出現したという教会だ。

このようなマリア様出現の地が、フランスの田舎には結構残っている。

古き時代の信仰の深さを思わせる。

 

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教会を過ぎるともうモワサックは目の前。

早く着きたくて、知らぬうちに歩く速度が速くなる。

でもいつだって大きな町では、町に入ってから宿までの距離が長いのだ。

 

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私は明日、モワサック駅からパリへ行く。

宿にチェックインした後、下見がてら駅まで歩こうと思った。

でもその前に、絶対に外せないのがサン・ピエール修道院だ。 

 

L'abbaye Saint-Pierre de Moissac

 

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堂々たる世界遺産

サン・ピエール修道院の回廊はフランスで最も美しいとも言われる。

(私はエクサンのサン・ソヴール大聖堂が一番だと思う)

 

聖書に詳しい人なら、柱の一つ一つに刻まれた物語を味わえる。

でも詳しくなくても、物語を想像できる。

かつて文字が読めない民衆たちに、教会は装飾絵画により教えを伝えたのだ。

 

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この日はミサは行われなかった。聖堂内はひたすら静かだった。

 

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Ancien Carmel

 

ルピュイ巡礼、最後の宿は教会付属のアンシャン・カルメル。

大人数を収容できる宿だ。

一人部屋を頼んだはずが、ドミトリーだった。

 

同室になった一人の女性は足を痛めて眠っていた。

明日も歩くのは控えると笑った。

同じく上のベッドにいたのは、この日途中で出会った若いスペイン人女性。

彼女も今日で巡礼は終わりだと言った。

 

Vue de la ville de Moissac

 

モワサック駅は無人で閑散としていた。

明日ちゃんと帰れるかな。まあ、きっと大丈夫だろう。

私はそれから町中を、ひたすら歩きに歩いた。

 

アンシャン・カルメルに戻ってから、さらに続く細い階段の道を上った。

突き当たりの丘の頂上にマリア像が建っていた。

マリア様目線で、モワサックの町を一望する。

 

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さて。 この後に面白い一件があった。

修道院付属の売店で、私は最後に特別なギフトをヤコブ様からいただいたのだ。

 

それは・・・私がずっと探していた修道院プロダクツのオイル。

「Fleur de Magdala」だった!

 

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サントボームの修道院で購入して以来、気に入ってずっと使っていたものだった。

でも日本では購入できず、フランスのどこの修道院でも売っていなかった。

実は巡礼中、修道院に入るたび、私はこのオイルを探していたのである。

 

それがやっと最終日にモワサックで発見できたのだ!

私は嬉しすぎて、店員さんに思わず言った。

 

「ずっと長い間、私はこれを探していました」

「私は今日で巡礼を終えます」

「まさに今日、最後の日に、このオイルと出会えました!」

 

店員さんも思わず感激。

手厚く包んでくれ(基本的にフランスでは包まない)、おまけもつけてくれた。

これは本当に本当に嬉しい出来事だった。

 

Merci, Camino! (そしてヤコブ様!)

 

書くことで、巡礼が本当に終わっていく。

終わることを許すことができる。

終わるから、また新しく歩き出せる。

歩く道があり、歩ける体があるということが、ただただありがたいと思う。

 

www.lanciencarmelmoissac.com

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Etape24 Lascabanes ~ Lauzerte

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Etape 24 Lascabanes ~ Lauzerte 24km

 

ラスカバヌを出てまもなく、前を歩く巡礼の後ろ姿を見かけた。

若い男性だ。

誰かの後ろ姿を見ながら歩くのはスペインの時は普通だったが、今回はレアだ。

私は気になって早足で彼に近寄った。

 

と、ちょうどサンジャンの教会が出現し、彼は中に入った。

私もその後を追って入った。

 

Chapelle St-Jean

 

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わたし 「(見知らぬ聖人を見上げて)これ誰?」

彼   「知らない」

わたし 「(教会由来の説明書きを読んで)よくわからない」

彼   「(読んで)僕もよくわからない」

       間 

彼   「君、日本人?」

わたし 「そう。あなたはフランス人」

彼   「うん。僕ミカエル。君は?」

わたし 「MIKI」

彼   「MIKI?」

わたし 「そう。・・・ミカエル? ミッシェルじゃなくてミカエル?」

ミカエル「うん」

わたし 「(翼を広げたアクション)大天使ミカエル?」

ミカエル「そうだよ。僕モンサンミッシェルから来たんだ」←ジョークです

 

ミカエルは20代半ばくらい。

つるんとした印象の、勉強ができなそうな(失礼)カワイイ男の子だった。

私はいっぺんに彼が気に入った。

 

教会を出てしばらく、私はミカエルの背中を見ながら歩いた。

歩くスピードが同じくらいだったから距離が縮まらず、そこが良かった。

守護天使に出会ったぞ、と私は思った。

大天使ミカエルに導かれて歩いているようで、嬉しかった。

 

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Montcuq 

 

モンキュの町ではマルシェが開かれていて、賑やかだった。

モンキュというと「Mon cul(私のお尻)」かと誤解したが、綴りが違う。(当然だ)

 

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不思議な楽器でパッフェルベルのカノンを演奏している男性がいた。

その美しい音色に足を止めて聴き入ってしまった。 

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観光案内所の前でミカエルと遭遇。

彼はここで宿を予約したらしい。

でもイースターだからどこも満室だと言われたそうだ。

私は昨日の予約が取れているかが気になっていたので、問い合わせることにした。

 

わたし「ロゼルトの宿に泊まりたいんですけど」

案内係「今日はどこもいっぱいよ」

わたし「昨日、ラスカバヌのジットで予約を頼みました。確認したいのです」

案内係「聞いてみましょう。(電話して)でないわ。つながらないわね」

わたし「(不安になって)・・・他の宿を予約できますか?」

 

案内係の女性とおじさまは親切で、片っ端から電話をかけてくれた。

だが、ロゼルトの宿はホテルもどこも既にいっぱい。

途中にある小さな村ではどうかと聞いたが、やめたほうがいいと断られた。

 

困っていたら、案内所の電話が鳴った。

何やら話している。ジャポネーズと聞こえたから私のことらしかった。

 

案内係「ロゼルトのジット・コミュナルに予約できてるって」

わたし「!」

案内係「15時以降にいらっしゃいって言ってるわ」

わたし「ありがとう!」

 

ラスカバヌのセシルがちゃんと予約してくれていたのだ。嬉しかった。

 

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それからは軽快に足が進んだ。

菜の花畑を過ぎ、森に入ると、カエルが大合唱している緑色の沼に出た。

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カエルはフランス語でグルヌイユ(Grenouille)。

奇妙な言葉だと思っていたけど、低くギュルギュル鳴く声を聞いて納得した。

日本で表記するようにケロケロなんて鳴かない。

ギュルギュル・・・グルヌイユだ!

沼の一帯は、魔女が出てきそうなグロテスクな雰囲気が漂っていた。

 

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魔女の沼の後はロバさんと遭遇。瞬時に心安らぐ〜。

  

Lauzerte

 

ロゼルトに入る頃には小雨が降っていた。

イースター当日だというのにうら寂しい。

とはいえ教会前の広場では植木市が開かれ、賑わっていた。

 

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教会を出て雨の中、ジットを探して彷徨っていたら、宿の中から声をかけられた。

声の主はコリンヌ。ジット・コミュナルの管理人だった。

日本人の宿泊者は珍しいので、すぐにわかったのだろう。

 

Gîte communal de Lauzerte

 

チェックインしてお茶を飲み、体が温まった頃、コリンヌが部屋割りを告げた。

 

「今日MIKIの部屋はスペシャルよ。イースターで部屋はどこも満室」

「でもセシルに頼まれてね。どうしてもMIKIを泊めてあげてって」

「だから私は夕食後、サロンにあなた専用のベッドを作ります」

「MIKIは今夜羽布団で寝るのよ、王妃みたいにね」 

 

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イースターの奇跡!

私はその日、ドミトリープライスで広いサロンを独り占め。

 

わたし 「どうしてそんなに親切なの?」

コリンヌ「(抱きしめて明るく)普通のことよ。巡礼には誰だってそうするわ!」

 

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サロンにはたくさんのカミーノに関する書籍や地図が置かれていた。

私は机に置かれていた大判の写真集を開いた。

そこには今まで歩いてきたルピュイの道とロカマドールの写真があった。

 

歩いたよ、ここ。ここも行ったよ、通ったよ。

 

グラビアの美しい景色や聖堂が、全部体の中に記憶として入っていた。

写真よりも確かに。そこで出会った人たちとの思い出と一緒に。

 

イースターにモワサックにはたどり着けなかったけど、これでいい。

完璧だ。

 

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私は確信していた。

完璧に信頼していい。この世界は私を裏切らない。

たとえ私の目にどのように写ろうとも、私は世界から愛されている。 

 

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www.gitecommunal-lauzerte.com

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Etape23 Figeac ~ Lascabanes

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Etape 23 Figeac ~ (Cahors) ~ Lascabanes 22km  + Bus

 

9:40  (Autocar 55509) FIJEAC 発  

11:19   CAHORS 着

 

フィジャックからカオールへのバスはあっけないほど簡単に来た。

私の他に乗客は二人。

バスの運転手さんはご機嫌で、ラジオの曲に合わせて一緒に歌っていた。

 

ほぼ時間通りに駅に到着。

街を抜け、勝手知ったる(?)ヴァラントレ橋を渡り、GR65の道に出る。

ルピュイの道、再開。

 

GR65! もうこの数字以外考えなくていいのだ!

 

今日からはまた、迷わないように何度も標識を確かめることはない。

その安心感といったらなかった・・・。

 

快晴。暑くなってきた。

初っ端から急激な登り坂。覚悟を決めて軽装になり、ガシガシ登る。

 

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高台から見下ろすカオールの街とロット川。

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途上の十字架に心惹かれる。見つけると写真を撮ってしまう。

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この日の目的地はラスカバヌ。

ここにある教会付属のジットでは足を洗うミサを施してくれるという。

すでにフィジャックから予約は入れていた。あとはたどり着くだけ。

昼も食べずに黙々と進む。

 

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途中のベンチで休憩中のムッシューに会った。

隣に座り、遅いお昼をようやく食べた。

クロワッサンをもりもり頬張っていると、ムッシューが笑って言った。

 

「君、今から朝食かい??」

 

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続いてベンチにやってきた二人のマダムは、汗だくだくだった。

顔は真っ赤、肌も日焼けして水ぶくれになっていた。

 

装備も靴も新しかったから、巡礼初心者と思われた。

どこから歩いているかと尋ねると、カオールからだという。

ということは、初日である。

 

二人はサンチャゴまで行くといったが、その荷物は明らかに重すぎた。

何かを捨てなければ歩き続けられないだろうと思った。

でもそれは歩くうちに、彼女たちが自分で理解していくこと。

他愛無い話以外、私は二人に何も言わなかった。

巡礼では自然とその人に必要な学びが、もたらされるからだ。

 

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『LE NID DES ANGES』

 

『天使の巣』という名前のジットに向かう。標識に名前が書かれていた。

 

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教会の扉に張り紙。ミサの時間が書かれている。

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オーナーのセシルは美人で、いかにもフランスの女性という感じ。

到着した私に、飲み物は何が欲しいかと笑顔で尋ねた。

「冷たい水」というと、冷蔵庫から冷えたカラフの水を出してくれた。

美味しかった。

 

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部屋にあったパウロ・コエーリョの本。巡礼者はみんな読んでる「星の巡礼」。

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ここまで歩いてきた自分の足をねぎらって・・・パチリ。

これから足を洗うミサに行く。

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ミサは18時に行われた。参加者は三人だけ。

どこからきたか、名前は何かと司祭に問われて答える。

 

朴訥な司祭は話があまり上手くない。

つっかえつっかえ、聖書の中の詩句を読んだ。

それでも誠実にミサを進行し、私たち巡礼者を丁寧に祝福してくれた。

私は彼に折り鶴をプレゼントした。

 

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夕食が始まってから、遅い巡礼が到着した。

途中で出会った二人のメダム(本日初日)だった。

彼女たちとは部屋も一緒だった。

二人のうち一人はアルザスから来たと言っていた。

 

わたし「アルフォンス・ドーデの『最後の授業』の舞台だね」

マダム「知らないわ」

わたし「アルザスの話・・・(有名じゃないのかな?)」

マダム「知らないわ」

わたし「じゃあ、アルザスといえば、シュークルート?」

マダム「!」

  

さて、翌日はイースターである。宿の予約をしなければならない。

わたしはセシルに頼んだが、彼女は忙しそうだった。

 

「これから別の教会に聖歌隊の練習をしに行かなきゃいけないの」

「でもあなたのことは予約しておくわ」

「今から出て、明日も会えないけど連絡しておくから。じゃあね!」

 

そんなようなことを早口でセシルは言い、出て行った。

不安は残ったが、委ねるしかあるまいと腹を括った。

 

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モワサックまであと51キロ。

私のルピュイの旅も終わりに近づいていた。

 

www.lenidesanges.com 

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