巡礼23日目③ 日本ではこれ、コットン・シャポーって言うんだよ。
巡礼23日目③ カンポナラジャ
ふたり一番乗りでアルベルゲに到着。まずは腹ごしらえ。
近くにスーパー「Dia」を発見。このスーパーマーケットは安いのだ。
早速、飲むヨーグルト(1ℓ)をゲットしに出かけた。
いろんな種類のヨーグルトが売っていて迷ってしまう。見ているだけで楽しい。
わたし「スペインの飲むヨーグルトっておいしいんだよね」
イヴ 「・・・・・・」
わたし「いろいろ飲んだ結果、このブランドが一番おいしい!(と、見せる)」
イヴ 「(見て)DANONはフランスだよ」
わたし「・・・・・・」
野菜やフルーツは基本的に量り売りである。
自分で好きなだけ袋にとって分量を量り、出てきた金額のシールを貼る。
ほとんどが断然、日本より安い。そしてデカイ!
生ハムなどはお店の人に言って切ってもらう。イヴはよくそうしていた。
パンもチーズも種類が豊富で、とにかく安くておいしい。
オレンジは売り場の横に、セルフで生ジュースを作る器械が置いてある。
その場で絞って飲めてしまうのだが、これがめっちゃうまである。
日本のような「お惣菜・お弁当コーナー」はないが、インスタント食品は充実している。
私がスーパーで買う商品はほぼ決まっていた。
パン。パスタ。ヨーグルト。チョコレート。チーズ。マンダリン。トマト。
ミニ・バター。ミニ・ジャム。水(500ml、泉の水を汲んでいく水筒にもなる)。
プルーンやフィグなどの携帯用フルーツ。マンサニージャのお茶など。
スーパーのレジでは小銭(サンチーム)をなるべく使うようにする。
大きなお札は敬遠されるし、自分にとっても財布は軽い方がいい。
カミーノ巡礼の荷物は妥協なく「軽い」に限るのだ。
ちなみにレジでは、商品を自分でカゴから外に出して計算してもらう。
支払いが済んだら、どんどん袋に入れないと次の客の商品が流れてくるので大忙しだ。
ここでテンパることなく買い物できると、巡礼慣れしてきた証拠だと思う。
アルベルゲに戻り、私はイヴに前髪を切ってもらった。
前の宿でもらった使い捨ての枕カバーの布を広げて、座り込んだ。
ヴィクトリノックスの小さなハサミしかなかったから、イヴは大奮闘だ。
若い韓国人のペリグリーノが二段ベッドの上に寝そべり、笑って見ていた。
わたし「コワフール(美容師)・イヴだね〜」
イヴ 「(真剣に)ブラシはある?」
わたし「(指さして)そこに」
間
イヴ 「おー」
わたし「?」
イヴ 「(笑顔で穏やかに)ごめん。切りすぎた」
わたし「なにぃいいい!!」
イヴ 「だいじょうぶ。もっと切ろう」
わたし「ちょっと待って鏡! ミロワール!」
韓国人「・・・!(笑った)」
午後の日射しが弱まってから、私たちはまた散歩に出かけた。
町外れの農道に心地よい風が吹いていた。
私の背丈ほどもあるカラスムギが、さやさやと白い穂を揺らしていた。
イヴがふと、私のサンダルを指さして言った。
イヴ 「君のサンダル、軽そうでいいね」
わたし「いいでしょ。これ安いの。日本で買ったの。1ユーロ」
イヴ 「1ユーロ!?」
わたし「(日本語で)吉祥寺のドンキで買ったの」
イヴ 「??」
わたし「(日本語で)イヴのはスリッパじゃん」
イヴ 「僕は庭で履いてるのをそのままリュックに入れてきた」
二人、大笑い。
ぶわっと大きく風が吹いた。
カラスムギの穂波を抜けて、タンポポの綿毛がいっせいに舞い上がった。
わたし「わあ、綿帽子」
イヴ 「・・・・・・」
わたし「(日本語で)日本ではこれ、コットン・シャポーって言うんだよ」←適当
イヴ 「Coton chapeau」
わたし「Coton chapeau」
スペインは春だ。
私とイヴは綿帽子が青空にとんで行くのを、ずっと見ていた。