カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

巡礼40日目 ここにこうして書くことが未来に約束されていたから、私はそこへ行った。

巡礼40日目 ルルド二日目 アベマリアの歌声が昨夜から耳に残っていた。 朝。沐浴場の前で、ギターの演奏に合わせて歌われる讃美歌だ。 ドキドキしながら沐浴の列に並び、浴場のカーテンの中に入る。 シスターから英語で指示を受け、衣服を脱ぐ。 水の中に…

巡礼39日目 歩きながら私は、足の裏から頭の先まで、感謝でいっぱいだった。

巡礼39日目 アンダイエ → ルルド ミネラルウォーターの値段が急に上がった。 そうだ。スペインじゃない、ここはフランスなのだ。 物価の違いに戸惑いながら駅前のカフェで朝食をとった。 アンダイエからダックスで乗り換えてルルドへ向かう。 隣に座ったお…

巡礼38日目 旅に必要なのは一本のナイフとビタミンCだよ。

巡礼38日目 サンチャゴ・デ・コンポステーラ → アンダイエ イヴ 「僕の父親はいつも大きなナイフを腰から下げていた」 わたし「・・・」 イヴ 「彼はそのナイフで、なんでも上手に仕事をこなした」 わたし「あなたもナイフを使うのが上手」 イヴ 「旅に必…

巡礼37日目② 巡礼者は幸いである。あなたは巡礼が終わった時に本当の巡礼が始まることを知るのだから。

巡礼37日目② サンチャゴ・デ・コンポステーラ そのバス停はフィステーラへ行く前にイヴと来ていた。 だから帰る道もよく分かっていた。 私は予約していたホテルへ、イヴはアルベルゲ・セミナリオへ行くことにした。 イヴ 「どこで君と会える?」 わたし「…

巡礼37日目① カミーノで私が体験した一番の奇蹟は、このイヴとの再会だ。奇蹟は、ある。

巡礼37日目① フィステーラ → サンチャゴ・デ・コンポステーラ 涙が出て仕方なかった。心の水道管が破裂して、両目が壊れた蛇口になった。 バスの外の風景は美しいのに、何を見てもかなしくてしょうがなかった。 昨日までイヴと一緒に歩いた道。今日は私一…

巡礼36日目② おおもとは一つ。みなもとは一つ。一つが一つの中で分かれて、「私」と「世界」を体験している。

巡礼36日目② フィステーラ フィステーラは「地の果て」という意味。ネーミングから終わり感が半端ない。 ちなみにフィステーラ一帯は「死の海岸」と呼ばれているそうだ。 巡礼者はこの地で古い自分を捨て、新しい自分に生まれかわると言われている。 身に…

巡礼36日目① 「さあ、海へいくよ」

巡礼36日目① オ・ロゴソ → フィステーラ バールも何もない山道をしばらく歩くと、ネベの聖母教会がこつ然と現れた。 古い時代の精霊が語りかけてくるような風情の教会。 やさしい水のエネルギーを感じた。 それからまた静かな道を歩いた。 ペリグリーノは…

巡礼35日目 人が死ぬのと同じように、旅はいつか終わる。終わるから、今がこんなにいとおしい。

巡礼35日目 ビラセリオ → オ・ロゴソ 「エオリエンヌ」 一番最初にイヴから教わったフランス語。 きれいな響きだからすぐに覚えた。 意味は風力発電機。カミーノを歩いていると必ず出会うモノだ。 この日も丘の上でくるくる回っていた。 オ・ロゴソ。小さ…

巡礼34日目② 言葉ではわからないけど、君の言いたいことを、僕は心で感じる。

巡礼34日目② ビラセリオ 「美しいものを見ることは精神に作用する」 ミケランジェロの言葉だったか。 歩きながら、ふっとその言葉が落ちてきた。 あまりにも美しい道だったから。 とはいえ何の変哲もない田舎の山道だ。 空が青くて、花が咲いて、緑が輝い…

巡礼34日目① 人と人が出会うまでの遥かな旅の道程。そこには人智を超えた存在の計らいが関与している。

巡礼34日目① サンチャゴ・デ・コンポステーラ → ビラセリオ イヴ 「日本語でchienはなんていうの?」 わたし「いぬ」 イヴ 「いにゅ」 わたし「(笑って)Non! いにゅじゃない。い・ぬ」 イヴ 「い・にゅ」 わたし「だからいにゅじゃないいいい」 サンチ…

巡礼33日目 「今日、私たちはペリグリーノじゃない」「そう、僕たちはトラベラーだ」

巡礼33日目 サンチャゴ・デ・コンポステーラ 朝起きて気が付いた。 ドアの下に小さな紙が落ちていた。 手帳のページを破った用紙に手書きで「Bonne nuit」。 イヴが昨夜、私に書き置いて行ったのだ。 着替えをして、大聖堂のミサに出かけた。 大勢の人がい…

巡礼32日目 「君はきっとカミーノをもう一度歩くだろう、その時は〝北の道〟を行きなさい」

巡礼32日目 サンタ・イレーネ → サンチャゴ・デ・コンポステーラ イヴ 「君は写真を撮らないの?」 わたし「撮らない。それより早く巡礼証明書をもらいに行きたい」 サンチャゴに着いたというのに、何の感動もなかった。 修理中の大聖堂を写真に撮る気にも…

巡礼31日目② すべては完璧に順調に進行している。たとえ私の目にそうと映らない時でも。

巡礼31日目② サンタ・イレーネ 二段ベッドの上段で昼寝から覚めた。 下段はイヴだが、ベッドにはいなかった。 横のベッドにピンクのTシャツを着たかわいいペリグリーノがいた。若い女の子だ。 履いているスパッツはド派手なグリーンとピンクのボーダーだっ…

巡礼31日目① 「サンチャゴに着くために君は靴を洗ったの?」「私の美学」

巡礼31日目① リバディソ → サンタ・イレーネ 日の出はいつも祈りの時間。 今日も歩かせていただけることに、私は手を合わせて感謝する。 祈るとき、いつも私の肩に手を置いて、イヴは何を考えていたのだろうか。 右手に太陽、左手に月が同時に出ている巡礼…

巡礼30日目② どんなに私が涙を流しても、世界は相変わらず優しくて美しいんだよ、カミーノ。

巡礼30日目② パラス・デ・レイ → リバディソ・ダ・バイショ 「僕のナイフが返ってきたよ」 イヴが嬉しそうにそう言った。 歩いている途中で、一人のペリグリーノがイヴを呼びとめてナイフを渡してくれたのだ。 イヴがそれを使っていたのを覚えていたらしい…

巡礼30日目① あなたは愛される資格があるのよ。価値があるのよ。・・・愛されなさい!

巡礼30日目① パラス・デ・レイ → リバディソ・ダ・バイショ イヴと意志の疎通が上手くいかない。 言ってることがよく分からない。 時々、空気の読めないイヴが嫌になる。勝手なものだ。悲しくなる。 互いに勝手な行動をとる。イヴが少し腹を立てたように感…