カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape18 Vers ~ Labastide-Murat

f:id:parasuatena2005:20190415094233j:plain

 

Etape 18  Vers  ~  Labastide-Murat 24km

 

この日、ラバスティッド・ミュラーに到着するまでに会ったのは4人だけ。

反対方向から来た二人の巡礼と、羊飼いのばあちゃんと、「ひふみん」だ。

 

f:id:parasuatena2005:20190415084653j:plain

 

もちろん将棋の「ひふみん」本人ではない。でもものすごく似ていたのだ。

丸顔で頬が紅くて、超カワイイ笑顔のおじいちゃんだった。

私が道を確認していたとき、彼は車でやってきて止まってくれた。

そして満面の笑顔で道を教えてくれた。

 

「どこから来たの? 何日歩いてるの? 今日は何キロ歩くの?」

「ひゃーすごいねえ〜! ウヒャウヒャウヒャ(と笑う)」

「僕ね、このコミューンに住んでるの。車で散歩中」

「前は自転車で1000キロ走ったんだよ〜! ウヒャウヒャ」

 

運転席の「ひふみん」は、私の「腕抜き」にも興味津々だった。

そう、私は「腕抜き」を両腕に装着していたのである。

 

「腕抜き」。これは100均で買える画期的な巡礼用品(?)だ。

暑くなったらサッと脱いで半袖になれるし、日が陰ったら長袖になる。

軽いしすぐ渇くし良いことづくめなのだ。

私が腕抜きをとったり外したりして見せると、「ひふみん」は感嘆した。

 

GR 46 苔むす森の道

 

f:id:parasuatena2005:20190415094416j:plain

 

GR 46。苔むした異界の巡礼道。鳥の声しかしない。誰もいない。

 

f:id:parasuatena2005:20190415094446j:plain まっすぐ行って左へ曲がる 

f:id:parasuatena2005:20190415094506j:plain 行っちゃダメ!

f:id:parasuatena2005:20190415095421j:plain

 

私は昨日、宿でみんなが喋っていた一人の巡礼を思い出していた。

野宿しながらプラハから3000キロ以上歩いている巡礼がいるというのだ。

彼はお金を持ってないから、出会った人に食べ物をもらっているという。

 

私も、どこでだったか忘れたが、不思議な青年とすれ違っていた。

ボロボロの赤いセーターを着て、手ぶらで巡礼道を歩いていた。

挨拶だけしてすれ違った。(危険なオーラを感じた)

夢見るような目つきで、トロンと歩いていた。東欧風の瞳だった。

彼かも知れない、と私は思った。

 

フランス人の道を歩いた時もチェコの巡礼と出会ったが、彼も野宿していた。

やっぱり夢見るような目つきで、ゆっくりゆっくり歩いていた。

それにしても無銭巡礼なんて・・・。もはや「旅」ではない、「放浪」だ。 

 

f:id:parasuatena2005:20190415103453j:plain

f:id:parasuatena2005:20190415104414j:plain

f:id:parasuatena2005:20190415104820j:plain

f:id:parasuatena2005:20190415104031j:plain

f:id:parasuatena2005:20190415112818j:plain

f:id:parasuatena2005:20190415120138j:plain

 

だんだん思考することもなくなってくる。

景色に同化して、ただ歩いている体があるだけになる。

 

f:id:parasuatena2005:20190415133050j:plain 

f:id:parasuatena2005:20190415133717j:plain

 

この小さな集落で、羊を放牧するおばあちゃんに会った。

羊が放たれて一筋の道のように走っていくのを私は初めてみた。

感動モンだった。

 

f:id:parasuatena2005:20200308192109p:plain

f:id:parasuatena2005:20200308192127p:plain

 

そしてまた誰一人いない道を行く。

地面は柔らかく、空気は湿っている。

土と木々の匂いに包まれて、ただ歩く。

・・・私も景色の一部であった。

 

f:id:parasuatena2005:20190415220033j:plain

 

『Le Savitri』

 

この日の宿はVersのオーナーが予約しておいてくれた『Le Savitri』。

管理者はヴェロニクという女性。

気さくな明るいおばちゃんだった。

普段は役所に勤めていて、ここには住んでないそうだ。

 

二階にあるドミトリーは一見、ダニがいそうなベッド。(いなかった)

使い古されたシーツやタオルが山と積まれていた。(でも清潔)

狭いキッチンには、凹んだ鍋やバラバラのカトラリー。(ま、問題なし)

常備してある調味料や食料品は賞味期限を要確認。(OKだった)

普通だったら泊まらないかもしれない古い宿。(だがここしかない)

 

f:id:parasuatena2005:20190415203455j:plain

 

今夜は一人と思っていたら、夕方にフランス人の四人組がやってきた。

奥のスペースに陣取り、一つしかないラジエーター(暖房)を奪っていった。

仕方がないから毛布を沢山使って夜の寒さに備えた。

 

いよいよ、明日はロカマドールだ。

黒いマリア様に会えると思うと、胸が躍った。

 

f:id:parasuatena2005:20200308163031j:plain
にほんブログ村 旅行ブログ フランス旅行へ