カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape17 Cahors ~ Vers (voie de Rocamadour)

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Etape 17  Cahors  ~  Vers (voie de Rocamadour) 18km

 

ここからはカミーノ・ルート(GR65)から一時的に離れる。

ロカマドールへ行くために、私は次のような行程を立てた。

 

1 Cahors → Vers  18km 

2 Vers → Lavastide-Murat  24km

3 Lavastid-Murat → Rocamadour  28km(ロカマドールで一泊)

4 Rocamadour → Gramat  15km(修道院を予約)

5 Gramat → Lacapelle Marival  25km(宿はないのでホテルを予約)

6 Lacapelle Marival → Figeac  21km(フィジャックに戻る)

7 Figeac → Cahors (en bus)→ ?(バスで移動後、カオールより先へ歩く)

 

普通、ロカマドールを目指す巡礼はフィジャックから歩き出す。

しかし私はその逆をいくため、お遍路でいうところの「逆打ち」をするわけだ。

そのためガイドブックも標識も逆から読まねばならない。

 

第一日目のこの日は、ロット川に沿って進むGR 36のヴァリアンテ。

地図によると、途中から川を外れて山に入っていく。

 

昨日のうちに観光案内所から予約していた宿は16時オープン。

どんなにゆっくり歩いても時間があるので、私は大聖堂へ出かけた。

 

La cathédrale Saint Etienne

 

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サン・テティエンヌ大聖堂は早朝にもかかわらず人で溢れていた。

どうやら特別なミサがあるらしい。

手に枝を持った人たちが沢山いたので『枝の主日』であることがわかった。

イースターまであと一週間なのだ。

 

聖堂の入口で配布されたビラを読むと、今年は聖堂建立900年記念!

さらに『Sainte Coiffe』という特別な聖遺物が公開されるという。

『Sainte Coiffe』がなんだか全くわからなかったが、興味深かった。

(知ってる方、教えてください・・・)

 

f:id:parasuatena2005:20200307152110j:plain  イエスの埋葬時に頭を包んだ聖遺物???

 

ミサが始まるまで時間があったし、堂内はものすごく寒かった。

私はミサを諦めて歩き出そうと聖堂を出た。と、一人のシスターに制された。

 

「あなた巡礼でしょ。今日のミサはスペシャルだからいなさい!」

 

そして彼女は私の腕をつかみ、アリーナ席(?)へ座らせた。

神の使者の言葉だ。仕方ない。流れにまかせ、待つこと数十分。

 

堂内には信者たちがわらわらと押し寄せ、席の争奪戦が始まった。

私の隣には厳しい表情のムッシューが座った。

彼は、空いている席に物を置いてキープしようとするマダムたちをたしなめた。

 

パイプオルガンが鳴り、司祭と聖歌隊が入ってきた。

が、司祭による枝の祝福は堂内の別の場所で行われるようだった。

信者たちがまたわらわらと移動する。

隣のムッシューは、私が枝を持っていないのを見て言った。

 

「あなたはここにいますか? 席、見ててくださいますか?」

 

私はウイと答え、寒さに震えながら、枝の祝福が終わるのを待った。

 

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日本と違って時間通りに進行しないから、いつミサが始まるかわからなかった。

が、もうこうなったら最後までいてやるのだ。

と、左側のブロックに見慣れたアメリカ人の巡礼を発見。

 

ジュニファーや〜〜〜ん!!!

 

私は二つの席にリュックを置いて、彼女のところに駆け寄った。

そうだよね、ジェニファーはクリスチャンだもん。そりゃいるよね〜。

私たちは寒さに震えながら再会を喜びあった。

 

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ようやく枝を持った人たちが帰ってきた。

隣のムッシューも戻ってきて礼を言い、自分の枝を一本私にくれた。

そしてやっとミサが始まった。

まず最初に『主の祈り』をみなさんで唱えましょう、と司祭が言った。

 

それなら言えますよッ!

 

私はみんなと一緒にフランス語で祈りを唱えた。

すると隣のムッシューは、私を信者と勘違いしたようだった。

配られたミサの紙を指差しながら、次はここだ、などと教えてくれる。

Vaylatsのクロディーのようだった。ありがたかった。

ミサの後、私は彼に折り鶴を渡した。ムッシューは笑顔になった。

 

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G R36 variante par la rive du Lot

 

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そしてロット川に沿って私は歩き出した。

すぐ左は川だから、滑って落ちたら危険な道である。

しかも石だらけのクネクネ曲がった細い道。ひと一人しか通れない狭さだ。

なのに、なぜだ!

自転車に乗ったレース野郎どもが向こうから何台も走ってやってくる!

 

なんやねん、あんたら〜!

なんでこんなとこチャリで来るんじゃあ〜!

 

私は彼らが来る度に立ち止まり、道を譲った。

自転車野郎どもは超早口で「メルシ」と言いながら走り去った。

 

流石に「逆打ち」だけあって、私と同じ方向で歩く者は誰もいない。

今までもだって巡礼者にほとんど会わなかったのに、今はさらに会わない。

 

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山に入ると晴れてきた。迷わないように、慎重に標識を確認しながら進んだ。

 

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Vers

 

Versに到着。市役所の隣、とガイドブックに記された宿に向かう。

宿の名前は『Le monde allant Vers』。

 

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「カオールから遡ってロカマドールへ行く巡礼は、君が二人目だ」

「宿を始めてから三人の日本人が泊まったが、フランス語を話すのは君が初めてだ」

 

 オーナーは私にそう言った。

 

ここでは、ルピュイのミサで一緒だったベルギー人夫婦とも再会した。

イヴォンと奥さんのクロディーヌ。

サンシェリーの宿でも一度会い、マヌケな私が映っている動画をくれた二人だ。

二人はロカマドールから戻ってきたところだった。

 

他にもフランス人の若いカップルと、オーナーの従兄とその姪がいた。

従兄と姪はモンサンミッシェルに住んでいるという。

行ってみたいと私が言うと、いつでもおいでと住所を書いて渡してくれた。

 

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ここでは夕食時、みんなから質問攻めにあった。

どうしてカミーノを知ってるのか、なぜ歩いているのか・・・etc。

私は一生懸命、知ってる限りのフランス語を駆使して喋った。

 

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宿のオーナーは、カミーノで人生が変わったと静かに語った。

彼が巡礼宿を開くまでの物語を、赤ワインを飲みながらみんなで聴いた。

 

翌日の朝、出発前。

クロディーヌが望んだので日本語で名前を書いてあげたら、大喜びされた。

二人のキャラクターをもとに、知恵を絞ってこんな漢字をあててみた。

 

クロディーヌ 黒帝犬

イヴォン 衣翻

 

これは去年、その二人から届いたニューイヤー・メール。

 

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www.lemondeallantvers.fr

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