カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape19 Labastide-Murat ~ Rocamadour

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Etape 19  Labastide-Murat ~ Rocamadour 28km

 

雨だった。レインスーツの下にダウンを着込み、黙々と歩く。

私と同じ方向へ進む人は誰もいない。

反対からやってくる巡礼者もわずか数名。挨拶だけ交わし、一人で進む。

 

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それは突然見えてきた。

そそり立つ断崖に身を寄せるように、建物が並ぶ異様な光景。

 

ロカマドールだ。

 

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Rocamadour

 

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村に入ると、歓迎されたかのように雨が止んだ。

メインストリートに出たら、降って湧いたような大勢の観光客! 

中世の面影を残した色とりどりの店が立ち並んでいる。

巡礼道とは打って変わった賑やかさに、キツネにつままれた感満載。

 

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ロカマドールへのアクセスは車のみ。

鉄道駅のある一番近くの村からは徒歩で1時間半。

歩いてくる人はほとんどいない。

私のようにカオールから三日かけて歩く人は・・・ほぼ皆無。

 

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『Accueil chrétien Le Cantou』

 

黒マリアさまの聖堂はすぐ近く。急な階段を登った先にある。

まずは宿で荷物を置こうと、私は予約していた宿『Le Cantou』のドアを開けた。

 

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f:id:parasuatena2005:20190417073643j:plain 共有スペース
 

この日は一人部屋。窓からは・・・崖。

 

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この宿は聖域にあり、独自のミサもおこなっていた。

18時にvêpresがあるからいらっしゃいと受付のマダムに言われた。

vêpresが何か知らなかったが、出席しますと私は答えた。

 

Sanctuaire de la Vierge Noire

 

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さすがは秘境の観光地。いろんな言語が飛び交っている。

日本語も聞こえた。初老の男性グループだった。

何人かとちょっと目があったが、なんとなく話しかけなかった。

 

私は観光案内所で明日の宿を予約し、お土産を物色した。

大好きなシトロン(レモン)のクレープも食べた。

フランスに来ると絶対食べるシトロンのクレープ(シンプルでおいしい)。

日本ではあまり売ってないのは需要がないから? レモンが高いから??

 

ちなみに日本語のガイドブックも売っていたが、鳥肌レベルの翻訳。

コンクでもそうだったけど、誰かなんとかして差し上げて・・・。

 

f:id:parasuatena2005:20190416175034j:plain この階段を上がって行く

f:id:parasuatena2005:20190416175119j:plain 階段から見下ろす

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f:id:parasuatena2005:20190416163445j:plain この中に黒マリア様!

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いた〜〜〜〜〜〜!!

 

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やっと会えた黒いマリア様は、小さいけれど威厳に溢れていた。

Sublime(崇高)という言葉がふさわしい。う〜ん圧倒・・・。

私は最前列で、感謝を捧げた。感涙。

 

マリア様・・・!

来させてくださって、ありがとうございます!

 

それからしばらく最前列のベンチに座っていた。

入ってくる人は誰もいなかった。

蝋燭の火がゆらゆら揺らめいて、夢の中にいるようだった。

 

と、不意にマリア様の声が聞こえた。(気がした)

 

「ね。バスが来なくて良かったでしょう?」

 

・・・はい。良かったです、アヴェ・マリア

 

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夜。私は宿でvêpres(夜の祈り)に参加し、信者さん達と聖書を読んだ。

たどたどしく、マリア様の歌も歌った。もっとフランス語を覚えたいと強く思った。

 

f:id:parasuatena2005:20190416162354j:plain お祈りの部屋

 

Chemin de la Croix

 

翌朝。私はまたサンクチュアリに出かけ、マリア様にご挨拶。

それから「十字架の道」へ出かけた。

すでに宿をチェックアウトしていたから背中のリュックが重かった。

けれど私は階段を何段も何段も登って、歩き続けた。

 

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私は「運ばれた」のかもしれない、とふと思う。

この巡礼に出るまでは、ロカマドールに徒歩で行くなんて思ってもいなかったのだ。

そんなことが自分にできるなんて考えてもいなかった。

でも結局、そのような流れがあって私は導かれた。

自分一人で成し遂げることなど何もない。

 

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ちなみにこの日。パリではノートルダム大聖堂が燃えていた。

でもwifiのない私は知る由もなかった。

 

www.sanctuairerocamadour.com

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