カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼31日目① 「サンチャゴに着くために君は靴を洗ったの?」「私の美学」

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巡礼31日目① リバディソ → サンタ・イレーネ

 

日の出はいつも祈りの時間。

今日も歩かせていただけることに、私は手を合わせて感謝する。

祈るとき、いつも私の肩に手を置いて、イヴは何を考えていたのだろうか。

 

右手に太陽、左手に月が同時に出ている巡礼の道。

最初は一人で、今は二人で歩いていることの不思議を思った。

明日はサンチャゴに着いてしまう。それなのに何の実感もなかった。

 

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「これ、あなたのでしょ?」

 

若い女性ペリグリーノから声をかけられた。

差し出されたそれは、私の手袋だった。

どこかで落としたらしい。まったく気付いていなかった。

 

「グラシア〜ス!」

 

たぶん、私とイヴは印象に残りやすかったのだろう。だから覚えてくれていたのだ。

それにしてもすばらしい。

イヴのナイフにしても私の手袋にしても、落とし物はちゃんと返ってきた。

しかも迅速に! あんびりーばぼー・カミーノ・デリバリー! 

 

ユーカリや松の林を抜けて歩いた。朝の森林浴。きもちよかった。

イヴは落ちているユーカリの葉を拾って揉んだ。

するととてもいい香りがするのだった。

 

 

サンタ・イレーネから700m離れたところにあるアルベルゲを、今日は私が選んだ。

少し町から離れているから静かだと思ったのだ。キッチンもついていた。

 

早く着きすぎないようゆっくり歩いたのに、12時には着いてしまった。

私たちはパンがなかったので買いたかったのだが、辺りにはお店がなかった。

イヴがおどけた調子で言った。

 

イヴ 「パンがない。神様パンを与えて下さい、ポルファボール(お願いします)」

わたし「・・・」

イヴ 「ミキが食べるための今日のパンがないと、イヴは泣いてしまいます」

わたし「大丈夫だよ、イヴ。パンがなければgâteau(ケーキ)を食べればいいじゃない」

 

アルベルゲの前で立っていたら、オスピタレイロの奥さんが来た。

早いけど荷物を置いていいわよと言ってくれた。

さらに、これから食事の買い物に行くけど、一緒に行くかときいてくれた。

 

「もちろん行きますとも!」

 

ガレージから車が出てきた。オスピタレイロのお父さんが運転するらしい。

その車を見てイヴは少し興奮していた。自分も同じのを一台持ってると言う。

私は車についてはよくわからなかったが、久々のドライヴに興奮した。

明日歩くはずのペドロウソの町に、あっという間についてしまった。

 

スーパーでパンと野菜、チョコなどすべて購入。

飲むヨーグルト(1ℓ)ももちろん買った。大満足だった。

 

わたし「私のアルベルゲの選択は正しかったね」

イヴ 「君はいつも正しい」

わたし「👍」

 

アルベルゲで昼食をとり、シャワーをすませて、ガンガン洗濯した。

この天気ならすぐ乾く。勢いがつくと止まらない私は、靴まで洗った。

 

イヴ 「サンチャゴに着くために君は靴を洗ったの?」

わたし「私の美学」

 

そう、明日はサンチャゴだ。

午前11時までに巡礼者証明書をもらえば、ミサで名前を呼んでもらえる。

でもそのためには早起きして歩くか、手前でもう一泊するかだった。

どちらもピンと来なかったので、私は明日の成り行きに任せることにした。

 

問題は宿だ。うるさいアルベルゲは嫌だった。

 

カウンターに、神学校付属のアルベルゲ〝セミナリオ・メノール〟のチラシがあった。

ドミトリー10ユーロ。シングルで13ユーロ。おお、いいじゃないか。

 

わたし「ここがいい。でも3ユーロしか違わないなら、シングルルームの方がいい」

イヴ 「君は正しい」

 

ブッキング・コムで予約できるか調べたら、シングルが16ユーロになっていた。

 

わたし「(日本語でつぶやく)ネット予約だと高いのかな?」

イヴ 「僕が電話で予約してみるよ!」

わたし「・・・」←英語もスペイン語もカタコトなのに電話できるのかと思っている。

イヴ 「(オスピタレイロにフランス語で)ここ、予約の電話してくれませんか?」

わたし「(日本語で)それ自分で予約するって言わないんですけど・・・」

 

値段はやっぱりシングルが16ユーロだった。

どうして高いのか、イヴに聞いたら「たぶんPâquesだから」だそうだ。

私はその単語を知らなかったから納得できなかった。(復活祭の意味だった)

 

イヴ 「予約してもらった! 13日と14日、僕はやったよ!」

わたし「(日本語で)私の分もだよね? ちゃんと頼んでくれたんだよね?」

イヴ 「(頭を抱えるジェスチャーしながら)日本語で喋らないで。僕は理解できない」

 

到着が早かったので、他のペリグリーノもまだ来なかった。

私は散歩に出かけ、イヴは庭のパラソルの下でサンチャゴの地図を広げた。

散歩しても散歩しても、自由な時間がどっさりあった。 

日本にいる時は時間に追われていたのに、ここでは有り余るほど時間があった。

 

「サンチャゴに着いたら、フィステーラまでのガイドブックを買おう」

 

そうだ、旅はフィステーラまで続く。サンチャゴは通過点だ。

まだ歩けると思うと、心が躍った。

 

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