カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼21日目② ぼくたちが今向かっているのは、美しくて有名な村だからね。

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巡礼21日目② マサリフェ → サンタ・カタリーナ・デ・ソモサ

 

アストルガに着いたのは13時過ぎ。

町に入ったはいいが中心街までなかなか辿り着かず、気持ちが焦った。

14時からシェスタだ。シェスタには店が閉まってしまう。

私はどうしても杖が欲しかった。

まっすぐ伸びた道をイヴと二人、足早に歩いた。

 

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そしてやっと到着! 

 

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メインストリートの入口に巡礼用品を売ってる店を発見!

見事に杖ゲット! 

パンプローナで買ったのよりも安かった。少し重たいからだろう。

でもグリップは前の杖よりも私の手にしっくりおさまった。

大満足! 目的達成〜!

 

「やったー! ありがとうイヴ〜!」

 

嬉しくなってイヴに抱きつくと、イヴは私の頬にキスをした。

思わず、反射的に身を引きはがす私。

あからさまな拒否反応に、イヴはちょっとさびしそうな顔をした。

ごめんよ、おいらは日本人・・・。

 

・・・なにはともあれ、観光! ガウディの司教館へ。

おお〜すげ〜かっこい〜!! シュペ〜ル!! トレ・ジョリ〜!!

など言いながら中に入ろうとしたら、まさかのクローズ!

シェスタに突入していたのであった・・・。残念。

 

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軽食もとらず歩いてきたので、私たちは腹ぺこだった。

アストルガはチョコレートが有名らしかったが、それよりも炭水化物シルヴプレであった。

 

「イヴ! ペリグリーノ・メニュー食べよう! 私が払う!」

 

良さげなレストランに入って、私は巡礼者メニューを頼んだ。

 

巡礼者向けのMenu del Peregrinoは10ユーロ前後。

第一皿はサラダ・スープ・パスタ・パエリヤなどから一品。

第二皿はメインディッシュの肉か魚。

これらにパンと、ワインか水がついてくる。(ワインと水は同じ値段なのだ)

そして〆はデザート。

 

私たちはチョイスするメニューも一緒だった。

なぜかはわからない。ただ、合ってしまうのだ。

ただデザートだけは違った。イヴは定番がプリンなのだが、私は気分で選んでいた。

 

食後。

すでに15時になろうとしていたが、私たちはアストルガより先へ進んだ。

お腹が満たされたので、ご機嫌だった。天気もよかった。どんどん歩いた。

 

 

ムリアス・デ・レチバルド。アストルガから4キロ。

思えば、ここで泊まれば良かったのだ。ここのアルベルゲも悪くなかった。

でも私はなぜか、さらに先に行きたいとイヴに告げていた。

しかも正規のルートではなく、別ルートを私は選んだ。

遠回りだが、そこにはいいアルベルゲがあるような気がしたのだ。

 

14時から17時。スペインはシェスタの時間。

午後の日射しは強いから、寝て過ごすに越したことはない。

この時間にリュックを背負って歩くことを、もともと私たちは好まなかった。

けれど、この日は別だった。私たちは炎天下を歩いた。

 

私たちが進む道を、車が何台も通っていった。

この先に何か特別なものがあるのだろうか?

へんぴな巡礼地には珍しい光景だった。

 

わたし「なんでこんなに車が多いの?」

イヴ 「ぼくたちが今向かっているのは、美しくて有名な村だからね」

わたし「なにそれ〜! 知らなかったよ〜!」

 

 

・・・美しい村だった。

 

赤いレンガ色の、石造りの町並み。歩道はすべて石畳だ。

ペリグリーノは私たち以外一人もいない。

夢のようだった。

 

別の次元に迷い込んだのかもしれないとさえ思った。

妖精が出てきそうな古い建物もあった。

写真を撮りたかったけど、私はすでにその元気がなかった。

だから今でもこの村のことを思うと、夢みたいな気がする。

 

洒落たレストランやお店もあった。

緑で飾られたオーガニック・カフェもあった。

風に乗ってどこからか、甘い花の匂いがしていた。

アルベルゲはどこだろう?

 

どんどん歩いていくと、とうとう村のどん詰まりになった。

他の観光客もいない。

店先のベンチに座って、スペイン人の男性がギターを弾きながら歌っていた。

イヴが彼に英語で話しかけた。

 

イヴ 「この近くにアルベルゲはありますか?」

ギター「一つあるけど閉まってるよ。この先まで行かないと」

イヴ 「この先?」

ギター「(弾くのをやめて、指をさし)サンタ・カタリーナ」

 

その指の先。美しい村の終点からのびるのは、ワイルドな巡礼道。

炎天下をまた何キロも歩かなければならない・・・。

私はもう歩けなかった。石造りの店先に座り込んだ。

イヴが隣に座った。

私はイヴに体を預けて、頭を寄せた。

 

「つかれた〜イヴ。もうあるけないよ」

 

私が日本語で弱音を吐くと、イヴはフランス語で何か言った。

そしてこつんと私の頭に自分の頭を寄せた。

スパニッシュ・ギターの音色と哀愁を帯びた歌声が、

花の香に混じって夢の村に流れていた。

私たちは寄り添い、しばらくその歌を聴いていた。

 

イヴ 「・・・Allez, petit cheval」

わたし「Petit cheval」

 

イヴのかけ声で仔馬は立ち上がる。

そしてやっとこやっとこ、その先へ、ワイルドな巡礼道を歩き出した。 

 

 

 

追記:ここは夢の村ではなく、現実に存在していた。(当たり前だ)

 

Castrillo De Los Polvazares

カストリージョ・デ・ロス・ポルヴァサレス。

中世の町並みを保存してある村。

マラガトと呼ばれる地域の文化と歴史を持っている。

〝名前を唱える間に通り抜ける〟と言われるくらい小さい村。

スペイン国内外からたくさんの観光客がやって来る。

 

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