カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼21日目① 前を歩くペリグリーノがいると、君は追い越そうとしてペースが早くなる。

 

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巡礼21日目① マサリフェ → サンタ・カタリーナ・デ・ソモサ

 

私の大好きな一枚の写真。

オルビゴ橋を歩いていくイヴの後ろ姿。

彼のペースはいつも一定で変わらなかった。

 

足の長さが違うから、私たちの歩幅は違っていたはずだ。

でも結果的に私たちの歩くスピードは同じだった。

8日間も一緒にいるのに、ペースの差からくる気遣いは全く感じなかった。

 

「Allez, petit cheval」

 

休憩を終えて出発する時に、イヴが私にそう言った。

Allerは「行く」という動詞だから「さあ行くよ」という意味だろう。

そのあとの呼びかけはなんだ・・・?

 

「ちいさい・・・馬?」

 

どうやらイヴが私につけたあだ名らしい。笑えてきた。

 

わたし「なんで馬?」

イヴ 「パッカパッカ、よく歩くから」

 

確かに、アルピニストのイヴと並んで、パッカパッカよく歩く。

我ながらいい馬だ。

それからイヴは、私の歩き方についてコメントをした。 

 

イヴ 「君は上り坂になると軽くギャロップする」

わたし「・・・・・」

イヴ 「そして頂上で息切れする」

わたし「そしたらイヴが私のリュックから水をとって渡してくれる」

イヴ 「・・・(ほほえむ)」

わたし「イヴはどんな道でも歩き方が変わらない」

イヴ 「そのほうが疲れない」

わたし「・・・・・・」

イヴ 「前を歩くペリグリーノがいると、君は追い越そうとしてペースが早くなる」

わたし「(笑って)うん」

イヴ 「人より先に、一番になりたい?」

わたし「それはない。昔はそういう気持ちもあったと思うけど・・・。

    私はただ、早く、人がいない道を歩きたいって思うだけ」

 

オルビゴを出ると道は二つに別れた。国道沿いの道と、遠回りの土の道。

私たちは別ルートをとった。(マサリフェを経由するのも別ルートだった)

別ルートは遠回りになるが、たいてい素朴で静かな道で、人も少ない。

 

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どこまでもどこまでもまっすぐな土の道がのびていた。

これぞ、ザ・カミーノ!

前も後ろも誰もいない。

それでも鉄道の駅があるからか、道の先に列車が通過するのが見えた。

 

空は青く、晴れわたっていた。

頭上を飛行機が通過していく。

 

わたし「飛行機だ」

イヴ 「うん」 

わたし「どこへ行くのかな?」

イヴ 「マドリッド

わたし「ボルドー?」←イヴはボルドー出身なのだ

イヴ 「トーキョー?」

わたし「ノンノーン! ぜったいちが〜う!」

 

この日、私たちは最終的に44キロ歩くことになるのだが・・・。

この時はそんなこと知りはしない。

のんきにアストルガにむけて、パッカパッカ進んでいった。 

 

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