巡礼7日目 あなたの両目を神に捧げなさい
巡礼7日目 エステージャ → トレス・デル・リオ
ロスアルコスを通過して28キロ以上歩いた。
「ワインの泉」のあるイラーチェでは、
確かに蛇口をひねるとワインがジャーッと出てきた。
美味しく飲み干した。
風の吹く一本道。
ぶどう畑。麦畑。
畑の中の古い遺跡の廃墟。
人の住む町に道は続き、道が町と町とをつないでいた。
道がある限り、歩き続けていれば町に出る。
そんなあたりまえのことが不思議で、そしていとおしかった。
トレス・デル・リオの町で、イレーヌとまた会った。
イレーヌはビール片手にすこぶるご機嫌だった。
アルベルゲの夜。
多国籍の食卓だが英語がわからず一人で食べる。
おいしいのに、淋しい。
言葉がわからなくても話しかければいいのにとも思うが、
勇気がなくてみんなの輪の中に入れなかった。
なんのためにここにいるんだろう。
そんなふうに考えると悲しくなった。
夜、牧草ロールのある畑へ一人で歩いていった。
闇の中。街灯がないから、迷わないように慎重に。
牧草ロールの上に寝転ぶと、
360度、目地の限りに広がる宇宙がそこにあった。
満点の星。
あんまりにもあんまりにも美しくて、泣けた。
そして思い出した。
ノートに書き留めていた詩人の言葉を。
「あなたの両目を神に捧げなさい。
神が夕日を観つめることができるように。
神が花を観つめることができるように。
神がそっと地面に落ちた葉を観つめることができるように。
あなたの両目の他に、神は目を持っていないからです」
満点の星の美しい夜。
私は一人だけど、一人ではなかった。