カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

巡礼19日目 自分が歩きたいように歩こう、これは私のカミーノだ。

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巡礼19日目 ブルゴ・ラネーロ → アルカウエハ

 

3月31日。桜の花が一気に咲き始めていた。

フランス語でサクラは「cerisier」という。

スペイン巡礼しながら、私は今日もフランス語のレッスンだ。

 

わたし「cerisier・・・って、féminin?masculin?(女性名詞?男性名詞?)」

イヴ 「masculin」 

わたし「・・・(メモする)」

 

国道沿いの道を歩き、お腹がすいたのでバールに入った。

料理が来るのを待っていると、白い桜の枝を抱えたスペイン女性が隣に座った。

 

「ブエノス・ディアス!」

 

挨拶するとその女性は桜の枝を私にくれた。

 

わたし 「え? くれるの〜?」

その女性「!!!!!(スペイン語で何かまくしたてる) 」

わたし 「グラシア〜ス!」

 

 

昼近く。小雨が降ってきたので今日はここで泊まろうとイヴと話す。

アルカウエハという小さな村。

アルベルゲはバールの奥にあった。

 

若い女店員さんが受付をしてくれたのだが、仕事に慣れていないらしかった。

店の主人に指示されながら、わからないなりに頑張って対応してくれた。

私は彼女に桜の枝をプレゼントした。彼女はすごく喜んだ。

 

キッチンはなかったが、電子レンジがあったので、パエリアをチンして食べた。

アルベルゲの庭には白い毛足の長い犬が寝ていた。

とてもおとなしく、かわいかった。

 

時間が山のようにあったので、小雨降る中、散歩に出かけた。

イヴはシェスタだ。

道路沿いの少し大きなバールに入ると、現地のオッサンたちがうじゃうじゃいた。

私はそこでカフェコンレチェとスモデナランハを頼んだ。

注文から挨拶、お礼まで全部スペイン語で会話した。

「やるじゃん私」・・・そう思った。 

 

散歩して、それでも時間があったので、アルベルゲのバールに戻ることにした。

若い女店員はもういなかった。

私が店の主人にコラカオを頼むと、彼はケーキをおまけしてくれた。

スペインの人たちはペリグリーノに気前がいい。

 

ケーキを食べながら、私は考えた。

このままイヴと一緒に歩くのか?

どこまで歩くのか? フィステーラまでは歩けない。私はバスだ。

サンチャゴまで一緒に歩くのか?

いくら歩調や好みが合うといっても、本当にこれでいいのか?

結論が出なかった。

 

でも、一つだけ確かなことがあった。

イヴと歩きはじめてから、私は無意識に、

「イヴはどうしたいか」を考えて計画を立てていた。

それはやめようと思った。

自分が歩きたいように歩こう、これは私のカミーノだ。

 

 

 

夜になっても明るいからだろうか、外では子供たちが遅くまで遊んでいた。

二人の女の子がスペインの童謡のような歌を歌いながら手を叩き合っていた。

そのメロディーはなんとなく懐かしく、郷愁を誘うものがあった。

私はその歌をヴォイスレコーダーに録音して、それからベッドに戻った。

 

 

わたし「イヴ、明日も私と歩きたい?」

イヴ 「Oui」

わたし「・・・・・・」

イヴ 「君は?」

               間

わたし「私は明日、レオンで杖とチョコレートとヨーグルトを買いたい」

イヴ 「レオンにはすぐに着くよ。でもまだ店が開いてない時間かもしれない」

わたし「大聖堂が見たい」

イヴ 「大聖堂を見よう」

 

アルベルゲの部屋には私たちの他に、機嫌の悪そうなおじいさん巡礼が一人いた。

部屋に三つしかないコンセントを独占していて、迷惑だと思ったが言えなかった。

私たちが喋っていると大きく咳き込んで、静かにしろというアプローチをしてきた。

 

もういいや。考えていても仕方がない。

歩きはじめたら道が、足が、歩き方を教えてくれる。

 

私はイヴにお休みと言って、寝袋に身を沈めた。

 

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