Wi-Fiは繋がらなかったけど、目の前の人と繋がれば満足だった。
NANS LES PINS
サントボームからナンレパンへ徒歩で戻り、バスの時間までその小さな町を散歩した。
バラがそこらで咲いている、古い城の見える美しい町。
小学校の前で、ゴミ出しに出てきたおじさんとばったり会った。
あそこに城があるんですね、と私は話しかけた。
突然日本人に話しかけられたおじさんは、緊張しながら答えてくれた。
が、なまりが強くて何を言ってるか全く理解できない。
私のフランス語もひどいものだから、さぞおじさんも理解しにくかろうと思った。
でもなんだか楽しくて、二人して勝手に喋りあって、大声で笑った。
観光案内所が開いていたので、Wi-Fiを繋がせてもらいに入った。
サントボーム滞在中は、Wi-Fiが繋がらず、情報が遮断されていたからだ。
窓口には親切な女性がいて、いろいろ話しかけてくれた。
サントボームまで行ってきた、素晴らしかったというと、嬉しそうに笑った。
私はすでに気が緩んでいて、とにかく饒舌になっていた。
サン・ピロンの美しさなど、感動したことを短い言葉で彼女に喋りまくった。
フランス語は喋らないと喋れないが、喋ればなんか通じる。(当たり前か)
Wi-Fiは弱くて繋がらなかった。でも目の前の人と繋がれば、満足だった。
お腹が空いたので、ピッツァリアに入って昼のランチを食べた。
小さいサイズのピザなのに、とてもデカイ。
サラダだけでもお腹いっぱいになってしまう量だ。
デザートのアイスも濃厚で量が多いので、残してしまった。
私がデザートを残すなんて日本じゃ信じられない・・・。
お金を払うとき、ふと見ると「春夏秋冬」という日本語の色紙があるのに気がついた。
これ日本語ですね、と店のおじさんに言った。
日本語だ、とおじさん。
私日本人です、と私。
日本人か、とおじさん。
たったそれだけの会話。もっとなんか話せないものか!
いや、おじさんは無口だった・・・。そういうこともある。
ピッツァリアの前に、「自由にどうぞ」と貼り紙のある木のボックスが並んであった。
ボックスの中にはたくさんのペーパーバック。
ミニ図書館になっているらしかった。
しかも持ち出し、持ち帰り自由だ。
私はルナールの「にんじん」を借りてきた。もちろん返せない。
MARSEILLE → CARCASSONNE
ナンレパンからマルセイユへ戻る。
バスは、最初に私が迷った方のバス停に停車した。
バス会社のサイトに示されていたのは降車場だったかと納得。
でも今日はここからさらに移動。
列車でカルカッソンヌまで行くのだ。
まずはTGVのチケットを買うため、駅へ移動。
マルセイユの切符売り場に並ぶ。スト前日だからか、そこそこ混んでいた。
私は、ただ窓口で切符を買うだけでも楽しかった。
フランス語を使いたくてたまらなくなっていたのだ。
少しでも通じるということ、コミュニケーションできるということの素晴らしさ。
TGVは2等車。窓側。料金はちょっと高くて41ユーロ。
ファミリーシートになると言われた。かまわない。
16時16分発、19時27分着。
カルカッソンヌへは、行く予定じゃなかった。
本当はボルドーまで行きたかった。
ボルドーには去年カミーノで出会ったパートナーのイヴがいる。
私は彼に会いたかった。
しかし、この時間ではボルドーへ着くのが夜中になってしまう。
夜中に初めて行く大きな街でホテルを探すのは、ちょっと辛い。
だったら手前の街まで行こう、そう思ったのだ。
「カルカッソンヌを見ずして死ぬな」という言葉があるのは知っていた。
そこが日本人に人気のある街らしいということも。
たしか世界遺産だったな・・・。まあ行っておくにこしたことなかろう。
あ、ユースホステルもある! しかもシテ(城塞都市)の中じゃん!
よし決めたっ!
・・・と、安易に行く先を決めたのだ。
まさかそのカルカッソンヌに、三日もいることになるとは思ってもいなかった。