カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

CARCASSONNE ③ 物事が動かないときは動かないのが最良。

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フランスはストライキとともに

 

休むのだ、客がどうだろうと! ストライキ中のフランス国鉄は。

とはいえTGVの場合、数本は不規則ながら運行する。

だが基本的にストライキの日の列車は動かない。だってストだから。

日本人には信じがたいが、フランス人にとっては「そういうもん」のようだ。

 

私は事態を甘くみていた。

予約してなくても、なんとかなるだろうと。

せめて翌日の予約くらいはできるだろうと。

・・・できなかった。カルカッソンヌの駅には駅員すらいなかった。

 

いや。

インフォメーション窓口に一人だけ、いた。

例の不機嫌な係員だ。

私がバス停の場所を聞いた時、超早口で喋って地図を無言で突き出した人だ。

その時も彼は見るからに苛立っていた。不機嫌オーラ全開。

 

私はためらった。しかし、聞いてみた。

 

わたし「ボルドーまで行きたいのですが、列車はありますか?」

係員 「(憎しみを込めた口調で)Je ne sais pas!(知らない!)」

わたし「・・・」

      間

わたし「今日は、か、買えない? け、券売機で買う?」

係員 「!!!!!(猛烈な早口で吐き捨てるように何か言う)」

      間

わたし「・・・(凍りつく)」

係員 「・・・(鼻息荒く、そっぽを向く)」

わたし「め・メルシー」

 

 

心臓がドキドキしていた。泣きたかった。

人によっては怒ってもいいくらいのところなのに、私は悲しかった。

思わずメルシーと答えた自分の反応にも傷ついた。

 

あかん。動揺している。

待合ベンチに座って、私はひとまず心を落ち着かせた。

 

インフォメーション窓口には、同じような客が並び、同じような憂き目に遭っていた。

私はそれをみて思った。

みんなはストライキで休日なのに、彼は昨日も今日も一人だけ働いている。

そりゃあ苛立つだろう・・・。う〜む・・・。

 

そう思ったら、もうそのことはどうでも良くなった。

 

私はすぐに次の手段を考えた。

バスだ。カルカッソンヌからボルドー行きのバスが出ている。

だがネットからは予約できなかったので、諦めていたのだ。

しかし、まだ諦めるのは早い。

私は駅前の旅行会社に入って、窓口のオバチャマに問い合わせた。

 

 

わたし  「ボルドー行きの、このバスに乗りたいのですが予約できますか」

オバチャマ「できるわよ」

わたし  「!」

 

私の心に、一筋の光がまた差し込んできた。

 

オバチャマ「(調べて)あら・・・そんな便はないわね」

わたし  「でも、ネットで見たんです」

オバチャマ「電話して聞いて見ましょう」

 

オバチャマはバス会社に電話して問い合わせてくれた。

 

オバチャマ「あなたのとこの運行時間を知りたいんだけど」

わたし  「・・・」

オバチャマ「でも女性がこのサイトで見たって紙を持ってきているのよ」

わたし  「・・・」

        間

オバチャマ「(電話を終えて)ごめんね。バスはないわ」

わたし  「え?」

オバチャマ「これは出発の曜日が決まってるの。明日は出ないわ」

わたし  「え〜!!!・・・ざんね〜ん!(がっくり)」

オバチャマ「残念ね」

わたし  「(机を叩いて訴える)ストライキで列車も動かないし!」

オバチャマ「(オホホと笑って)C'est la france avec ses grèvés!」

 

それがフランスよ〜。ストライキとともに〜。

 

オバチャマは笑ってそう言った。

その明るさに救われたように私も思わず笑った。

 

BLA BLA CAR

 

宿泊していたアパルトマンのオーナーにも相談した。

ユースホステルは一泊でもう十分だった)

彼はブラブラカーを勧めてくれた。

私は知らなかったが、ブラブラカーはヨーロッパで人気らしい。

 

「インターネットでヒッチハイクするようなものだよ」

 

オーナーはそう説明してくれた。

サイトを調べてみると、いわゆるカーシェアリングのシステムだとわかった。

車で長距離移動の際、空席に同乗者を募り、任意の料金で乗せるという紹介サイト。

料金は車の持ち主により、応相談。

 

ブラブラとは「お喋り」の意味で、喋りながら行こうって感じの造語らしい。

サイト内にはブラブラ度の表示もあり、お喋り好き具合がわかるようになっている。

 

料金は列車やバスより安い。言葉ができる人にとっては、楽しそうだ。

登録してみたかったが、私の電話番号ではできなかった。(ちと残念。ちと安心)

 

 

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写真は私がその日泊まったアパルトマンの部屋。

オーナーの趣味がそのまま伝わってくる。

 

オーナーは話好きで、とても親切だった。

部屋も広くてきれいで、朝食も美味しかった。

小さな庭もあって、たくさんの鳥が鳴いていた。

鳥の楽園のようだった。

 

オーナーは、日本の離島に住む麺職人とフェイスブックで繋がっているといった。

 

「会ったことはないけど、友達なんだ。インターネットの魔法」

 

彼はそう言って笑った。

 

 

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ストライキはもう一日続くから、私はカルカッソンヌでもう一泊する必要があった。

私はシテ内のホテルを予約した。直前の予約だったので割引価格になった。

さらに部屋が空いているということでアップグレードまでしてくれた。

ありがたい。

 

私は荷物を置いて、またお城へ向かった。

 

城門前の広場では、四人の清掃員がパフォーマンスをやっていた。

本物の清掃員ではなく、清掃員に扮したダンスパフォーマンスだ。

これがボルテージ高くて最高に面白かった。シンプルなのにクオリティーが高い!

 

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彼らは観客を巻き込んで、子供から大人まで楽しませてくれた。

私は最前列に座って、何度も大声で笑い、拍手した。

 

 

この日。

ストライキで移動できないのはアンラッキーじゃなかった。

すんなり移動するより多くのギフトを私はもらった。

 

すべては完璧。

物事が動かないときは動かないのが最良。

 

カルカッソンヌの空は晴れて、美しかった。

 

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