カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape7  Saint-Chély-d'Aubrac ~ Espalion ①

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Etape7  Saint-Chély-d'Aubrac ~ Espalion①  23,5km

 

今日の目的地はエスパリオン。

出発前、ジットの広告を見ていたウルリケに、宿のオーナーが声をかけた。

 

オーナー「エスパリオンに泊まるなら、そのジットがいいよ。予約する?」

ウルリケ「お願い」

 

私も、と頼んでもよかったのだが、なぜか言わなかった。

でもそのジットの名前は記憶した。美しかったから。

Au Fil de L'Eau』・・・水の糸(水の流れに沿って)。

 

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サンシェリーの聖堂に行ったがクローズだった。

ぬかるんだ道を前進し、山道の上りにかかったところで、ウルリケ発見。

「先に行って」と言われたので、遠慮なく先に行く。

 

L'Estrade

 

レストラッドの小さな村に入った時、小雨が降ってきた。

民家の中に巡礼者用の休憩場があったので、さっそく避難する。

先客は二匹の猫。にゃあにゃあ。

 

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村を出ると道は森に入った。木々が小雨をさえぎってくれる。

途中、せせらぎにかかる小さな橋のたもとにベンチがあったので、

座ってマンダリンを食べた。(だって食べたかったんだもん)

 

と、やさしげなフランス人男性の巡礼がやってきた。

初めて見る顔だ。

お互いにちょっと微笑み、挨拶だけ交わした。

 

二つ目のマンダリンを食べていると、今度はベルナールがやって来た。

でも私はもぐもぐやっていたので、会話はせずに手だけ振って別れた。

 

La Rozière

 

森を抜けると、景色は牧草地に変わった。

雨が止んだ。

ほどなく、中世風の建物が並ぶ美しい村に出た。

 

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Saint-Côme-d'Olt


古い橋のところで、ベルナールとさっきのフランス人が一緒に休んでいた。

私たちは合流し、「きれいな家だ」と口々に感嘆して写真を撮った。

 

フランス人の名前はジャン・ピエール。

オモン・オブラックから歩いているという。

ベルナールと彼は意気投合したらしい。

ネイティブ会話について行けない私は、先に行くねと言って別れた。

 

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サン・コム・ドルトの聖堂は閉まっていた。今日は聖堂ハズレの日。

うろうろ散策していたら、ベルナールの赤いポンチョが見えた。

ベンチでタバコを吸っていた。

私が近寄ると、彼は隣を空けてくれた。

座って話をしていたら、また雨が降ってきた。しかも大粒だ。

私たちは近くのトンネルに避難した。

 

トンネルには先客がいた。猫じゃない。ジャン・ピエールだ。

しばらくして小止みになった頃、ベルナールが言った。

 

「コーヒー飲み行くか?」

 

私たち三人はカフェに入った。

 

ピエール 「(英語で)今日はどこまで行くの?」

わたし  「エスパリオン」

ピエール 「一緒だ」

ベルナール「(フランス語)MIKI、どこに泊まる?」

わたし  「(フランス語)予約してない」

ベルナール「いっぱいあるぞ(と、スマホで宿のリストを見せる)」

わたし  「WIFIがあって、キッチン使えるところ!」

 

ベルナールとピエールは親切で、スマホで宿を検索してくれた。

 

わたし  「あ。ここがいい」

ピエール 「『Au Fil de L'Eau』」

ベルナール「悪くねえな」

 

それからジャン・ピエールが、私の代わりに宿に電話をしてくれた。

そして宿のオーナーから聞いた暗証番号を、私に伝えた。

 

ピエール「(英語)早く着いたら、このパスワードでドアを開けるんだよ」

わたし 「パスワード」

ピエール「大事だよ、忘れないで(と、メモした紙を渡す)」

 

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カフェを出ると外は晴れていた。

私たちは三人でエスパリオンに向けて歩き出した。

ロット川沿いの美しい道は、この辺りが世界遺産だということを思い出させた。

分岐点に来た時、ピエールが言った。

 

「ここから道は二つに分かれる。山道と、川沿いの道。君はどっちに行く?」

 

山道は急勾配で険しそうだ。でもカミーノの矢印はそちらを指していた。

私は山道を選んだ。

 

「じゃあ、僕と一緒だ」

 

ピエールが言った。

ベルナールは手を振って、川沿いの道を歩いて行った。

 

Vierge de Vermus

 

ピエールの歩くスピードは速かったから、私は一生懸命ついて行った。

急な傾斜に来ると、彼は振り返り、手を差し伸べて助けてくれた。

そして英語で話しかけては、勇気づけてくれた。

それは嬉しかったけど、フランス語で話してもらえないのが少し寂しかった。

 

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山頂にはマリア像が立っていた。そこからの眺望は360度のパノラマ。

汗ばんだ頬に吹いてくる風が、心地よかった。

私の体調は完璧だった。

不思議なことに、オブラックの雪山を越えて以来、風邪は全快していた。

 

L'église de Perse

 

山を降りたところに墓地があり、その奥にペルス教会があった。

中に入って息をのんだ。

圧倒的に美しかった。(世界遺産だった・・・)

 

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教会を出て、下るとすぐにロット川に出た。美しいプロムナード。

エスパリオン到着。予約していた宿はすぐ近くにあった。

私はピエールにお礼を言って別れた。

 

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