カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape7  Saint-Chély-d'Aubrac ~ Espalion ②

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L'église paroissiale Saint Jean-Baptiste

 

Etape7  Saint-Chély-d'Aubrac ~ Espalion①  23,5km

 

ジットのドアは開いていたが、誰もいなかった。

私は中に入り、一番いいベッドをキープし、勝手にシャワーを浴びた。

最初のスペイン巡礼の時とは大違いの大胆さ。

Au Fil de l'Eau』は素敵なジットだった。

 

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洗濯物を干していたら、階下から声が聞こえた。

降りていくと、オーナーのミレイユがいて、笑顔で歓迎してくれた。

ウルリケはまだ到着しそうにない。

私は散歩に出た。目的地は聖堂とスーパーと観光案内所(宿の予約)である。

 

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聖堂を出たところでウルリケに会った。

「パン屋を探してるの」とウルリケ。

わからないので、道を歩いていた女性に聞いた。

だが彼女が教えてくれた店はパン屋ではなくナイフ屋(couteau)だった。

 

「ここにパンがあるわけないジャない!」

「フランス人、意地悪ッ!」

「私のフランス語を理解しないンだからッ!」

 

ウルリケはいつものようにプンプン怒った。

私は先に観光案内所に行きたかったので、また後でねと言って別れた。

 

f:id:parasuatena2005:20191227180919j:plain L'ancienne Eglise Saint-Jean

 

観光案内所の場所はすぐわかった。近くにスーパーも発見。

さらにスーパーから出てくるベルナールとジャン・ピエールも発見。

私は嬉しくなって犬のように駆け寄り、二人に抱きついた。

 

観光案内所で明日の宿の予約を入れた。

23.5km先のMassipのジットだ。

それからスーパーで買い物して『Au Fil de l'Eau』に戻った。

 

・・・だが、ドアが開かない。

そう、パスワードが必要なのだった。

ピエールが「大事だよ」と言って、紙に書いて渡してくれたのを思い出した。

でも、持ってない。その紙はリュックの中だ。

 

やばい。

窓に向かって叫んだが、誰も出てこない。

扉を叩いても、応答なし。・・・困った。

 

が、その時、ドアが開いた。

中から出てきたのは長身で白髪のアメリカ人じいちゃん。

ちょうど出かけるところだったようだ。なんてラッキー!

私は彼にお礼を言って中に入った。

 

じいちゃんの名前はビル。フロリダ出身。

ルピュイから出発し、サンチャゴまで歩くのだという。

無口だったが、それは英語しか話せないからかもしれなかった。

 

Au Fil de l'Eau』

 

この日の宿泊者は、ウルリケとビルと私の三人だけ。

夕食は別々に作って、三人で一緒に食べた。

ウルリケはハーブをふんだんに使った野菜スープを作った。

おいしそうだった。(ヒルデガルド・ビンゲンのレシピだと言っていた)

私は私で、調子に乗っていろいろ作りすぎてしまった。

ウルリケが笑った。

 

ウルリケ「(爆笑)MIKI、お皿多すぎ〜! 一人で何人分食べるつもり?」

わたし 「日本には、小さなお皿で、少しづつ食べる習慣があるの!」(言い訳)

ウルリケ「(お皿を数えて)1、2、3、4、5皿もあるわよ!」

わたし 「(日本語で)だって小皿がないんだもん!」

ビル  「・・・」

 

 

ウルリケ「(フランス語)MIKI、あなた今日山を越えてきたの?」

わたし 「Oui!」

ウルリケ「じゃあ山頂のマリア様見た?」

わたし 「見た!」

ウルリケ「いいわね〜」

わたし 「(英語)ビル、明日はどこまで行くの?」

ビル  「Massip」

わたし 「同じだ」

ウルリケ「(フランス語)じゃ、私もそこまで行くわ、頑張る」

わたし 「(フランス語)ほんと?」

ウルリケ「この道とこの道をショートカットして、頑張る」

 

実はウルリケは近道マニアだった。

いかに短い距離で目的地に着くかを、常に考えて選んで歩いていた。

(その生真面目さは、いかにもドイツ的気質と思われた)

私はカミーノの正規ルートを行ったが、彼女は必ず近くて楽な方を選んだ。

それなのに、彼女は私よりいつも到着が遅かった。歩くのがマジで遅かったのだ。

  

Le Musée du Scaphandre

 

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このジットのスタンプは潜水夫のイラストだった。

理由を尋ねると、オーナーのミレイユが笑顔で教えてくれた。

 

「この町にはScaphandreの博物館があるのよ」

 

その単語を知らなかったので調べると、「潜水服」とあった。

ジュール・ヴェルヌはこの町の潜水機に発想を得て『海底二万里』を書いたそうだ。

エスパリオン、深い町であった。

 

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gite-espalion-aufildeleau.fr

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