Etape16 Vaylats ~ Cahors①
Etape 16 Vaylats ~ Cahors① 24km
クロディーに見送られた後、ジェニファーと一緒に歩き始めた。
彼女はCaminoアプリを持っているので道に迷う心配はなかった。
ジェニファーと話しながら私は痛感していた。
ああ、英語をもっとベンキョ〜していたら良かった〜!
幸い彼女は頭が良かったので、私のデタラメ英単語の羅列を理解してくれた。
彼女はこれまで、旦那さんと世界中を旅したそうだ。
行きたいと思ったところには行くんだって言ってた。
フロリダ出身。旦那さんはユナイテッドステイト航空のパイロット。
旦那さんも子供たちも、彼女をこの旅へ快く送り出してくれたという。
今回の彼女の終点は、もちろんサンチャゴ・コンポステーラだ。
「本当は北の道を歩きたいと思って、ガイドブックを買っていたの」
「でも色々調べて、北の道は自分には難しいと思った」
「だからフランス人の道に変更することにしたの」
私は自分が歩いたフランス人の道の素晴らしさについて、彼女にシェアした。
泊まって欲しいおすすめのアルベルゲについても。
また、今回の旅で犬に噛まれたことも、この時に話した。
彼女はびっくりしていた。
ロカマドール行きのバスは来なかったけど、それで良かったことも私は伝えた。
わたし 「Because, because・・・ I could meet you!」
ジェニファー「・・・(笑ってうなづく)」
わたし 「I could go to ・・・that monastery!」
ジェニファー「・・・(うなづく)」
わたし 「I think・・・I think・・・Everything is a gift!」
間
ジェニファー「I agree」
しばらく二人で歩き、またねと言って別れた。
歩く速度が違うから、気を遣ってしまう。気を遣われてしまう。
それは私は嫌だった。
カオールでは別の宿に泊まるから、もう会えないかもしれなかった。
でもFacebookでつながっていたから、さびしいとは思わなかった。
道がないッ!
と、パニックになったのは、この先だった。
ちょうど国道を横切って巡礼道に入るはずの地点。
地図によると確かにそこから道が延びているはずなのに道がない。
どこにも道が見あたらない。
あるのは道路に沿って続いている岩壁ばかり。
私は何度も行ったり来たりして道を探した。
わからない。
標識のあった場所まで引き返して確認した。
標識はあった。
そこまでは道があっていたということだ。でもこの先は・・・。
木陰に一台のキャンピングカーが泊まっていた。
運転席にいたおじさんに私は声をかけた。
おじさんは気さくで、おしゃべりだった。
「僕、スイス人なの。フランスとの国境近くに住んでるの」
「家内と一緒に旅してるの。家内はいま奥にいるの」
「カオールへ行くのは・・・よくわからないんだけどね」
「あ、そうだ。道路地図があるから見てあげるね!(と、開く)」
「う〜ん、あの高速道路を右の方に行くんだね、多分」
「でもよくわからない。(ニコニコ)ごめんなさいね〜!」
そこでもう一度私は、道があるはずの地点に立ち、maps.meを広げた。
maps.me・・・このアプリは最終手段として役に立つ。
最初にダウンロードしておく必要はあるのだが、wifiがなくても地図が見れるのだ。
そのmaps.meによると、確かにその場所に小さな文字でcheminと書いてあった。
「chemin=道」
道はある。
ふと、私は目の前でぴょんぴょんジャンプした。
と、・・・道が見えた。
道があるッ!
あったのだ、岩壁の上に道がっ!
目の前の岩壁をよく見ると、雪崩の後のように不自然に崩れている。
私は岩に手でしがみつき、注意深く足をかけ、よじ登った。
リュックが重かったけど、頑張った。
はたして。
登った先には嘘のように、巡礼道の風景が広がっていた。
左手にあっけらかんと、普通に道が続いている。
なんじゃあ、これぁあああ〜・・・!
多分、私は身長が低いから、見えなかったのだ。
目線が高いヨーロピアンたちはきちんと道を認識し、よじ登って行ったのだろう。
それにしても・・・。
こういうところこそなんか表示しておいてよ〜、カミーノ!
歩きながら。
私はボイスメモに、その日あったことなどを忘れないように録音していた。
(ノートに書ききれないものは録音するに限るのだ)
時々立ち止まって、鳥の声や川の流れる音なども録音していた。
それらを参考にしながら、今この日記を書いている。
この日のボイスメモには、次のような詩(呟き)も吹き込まれていた。
体が君を連れていくのに任せることだ
考えながら歩いてはいけないよ
思考が歩いてしまうから
感じながら ただ歩いていけばいい
体は自然と一緒になって君を導いている
言葉や知識より確かに
目の前のものを見て、聞いて、触れて
無防備に 心を開いていけばいい
それでも思考はやってくる
鳥が木に止まるように
ならばそのままにしておけばいい
鳥はやがて枝から離れて飛び立っていく
ああ いい天気
地面に伸びている自分の影が 歩いている
こんなことも喋っていた。
「次の旅に必要なもの」!
なんと私は旅しながら、次の旅のことをもう考えていたのだ。
「次の旅に必要なもの」
半袖のモンベルのインナー ストック二本、軽いもの
靴下は長いもの 五本指靴下、これも長めのもの、三足
ジップロック ウェットテッシュ
コットン 赤チン 消毒液 葛根湯は少し多めに 繕うのに必要な色の糸
ゴアテックスの手袋 小さい石鹸 タッパー 簡単な英語を学ぶこと
フランス語は単語、構文、それから文法をさらう ディクテ
聴く、話すを教材で これは独学でいい
リアルスピードのフランス語になれること