Etape11 Livinhac-le-Haut ~ Figeac②
Etape 11 Livinhac-le-Haut ~ Figeac 28km②
どうして人は出会うんだろう、必ず別れるのに。
私は泣きながらフィジャックの町を走っていた。
その日、約束の17時に聖堂の前でベルナールとジャン・ピエールと待ち合わせ。
一緒に買い物をして、それから私たちはカフェに入った。
私は愚かにも、自分のことしか考えていなかった。
明日からロカマドールへ向けて出発する。
そのために宿の予約を済ませておきたかったのだ。
観光案内所が閉まっていたので、私は二人から情報をもらい、予約も頼んだ。
私のためにピエールはスマホで検索し、ベルナールも行程を考えてくれた。
3人で過ごす最後の時間を、私は自分の都合のためだけに使ってしまったのだ。
ピエール 「(スマホで時刻表を見せて)ロカマドール行きのバスはある」
わたし 「バスじゃなく、3日かけて歩きたい。明日はLacapelle Marivalに行く」
ベルナール「・・・(タバコを吸いつつ聞いている)」
ピエール 「(調べて)ダメだMIKI、Lacapelle Marivalにはジットがない」
わたし 「ジットがない?」
ピエール 「まだクローズしてる。歩いて行くのは無理だ」
わたし 「クローズ」
ベルナール「(私の目をじっと見て)・・・良くねえな」
わたし 「?」
ベルナール「(はっきり断言)その計画は良くねえ。やめた方がいい」
間
わたし 「じゃ、バスで行く。ロカマドールの宿を予約したい」
ピエール 「・・・(私の代わりに宿に電話する)」
ベルナール「俺はもう行く」
わたし 「ベルナール」
ベルナール「・・・(フランス語で何か言う)」
わたし 「(理解できず)ベルナール・・・(手を伸ばす)」
ベルナール「Bonne route(握手して去る)」
間
ピエール 「(電話を切って)予約できたよ。17時までに到着しているようにって」
わたし 「ありがとう」
そうして私はジャン・ピエールとも別れた。
どうしてあの時間、もっと別のことを話さなかったのだろう。
カフェを出て、一緒に分かれ道まで歩いた。
二人と歩けて楽しかったこと、親切に感謝していることを伝えた。
別れ際にハグをした。ブワッと涙が出た。
あまりに涙が出て止まらず、恥ずかしくなり、ピエールの顔を見れなくなった。
涙を拭いながら、手を振って別れた。そして走った。
どうして人は出会うんだろう。必ず別れるのに。
胸が引きちぎれそうに切なかった。
Gîte d'étape du Gua
ジットに戻ってフランス人たちと一つのテーブルを囲み、夕食。
食事は美味しかったし、みんな親切だったけど、私はさびしかった。
メインディッシュが運ばれる前に、遅れてきた一人の巡礼が到着した。
アメリカ人女性。50才後半くらい。
太ってはいないけど大柄で、ブロンドのストレート・ロングヘアー。
全身から優しそうな、聖母マリアを思わせる雰囲気を醸し出していた。
彼女は私の隣に座った。宿のオーナーが彼女に英語で質問した。
オーナー 「ジェニファー、ロカマドールはどうだった?」
アメリカ女性「すばらしかったわ!」
ジェニファーは敬虔なカトリック教徒だった。
昨日バスでロカマドールへ行き、ついさっき戻ってきたのだという。
私も明日行くのだと言ったら、聖堂内で撮影したという動画を見せてくれた。
黒いマリア様や天使たちが美しく映されていた。ドキドキした。
食後。
私は宿のオーナーからロカマドール行きのバス停の場所と出発時間を聞いた。
ジェニファーはSNCFのサイトでバスの切符を買っておくと便利だと教えてくれた。
この夜、ジェニファーと私は同じ部屋だった。
眠る前。
ジェニファーは日本人のように両手を合わせて、申し訳なさそうに私にこう言った。
ジェニファー「ごめんなさい、私はいびきがすごいの。あなたは眠れない」
わたし 「大丈夫〜慣れてるから! 問題ない。気にしないで!」
が、しかし。
彼女のいびきは天地を揺るがす轟音だった。
しかも今まで聞いたこともない超ド級の騒音!
拷問やあぁぁぁぁん・・・!
一日だけ、今夜だけだと私は耐えた。
この後も彼女と一緒の夜が続くとは、この時思ってもいなかった。