Etape20 Rocamadour ~ Gramat
Etape 20 Rocamadour ~ Gramat 15km
ロカマドールからフィジャックへの道、GR6を行く。
この日もまた一人、静かなるカミーノ。
Gorges de I'Alzou
アルゾー渓谷。せせらぎの美しさに身を清められる思い。
足を滑らせぬように注意しつつ歩くうち、出現する苔むした遺構群。
Moulinとあったから、水車小屋か製粉所の跡か。
不思議な空間に紛れ込んだようで、しばらく動けなくなった。
いつか見て忘れた夢の中に佇む気持ち。
急な勾配の道。写真では伝わらないけど、このままこの角度で登る。
めっちゃハード。Je suis morte!
ほどなく、Lauzouに近づくと、牛の糞の匂い。
民家が近いと知らされる。
途上で出会うのは人ではなく家畜ばかり。
それでも生き物と出会うことが嬉しい。
みんな同じ土の上で生きている。
墓地が見えるともう町の入口だ。グラマの町。
Le Grand Couvent
この日の宿は修道院『Le Grand Couvent』。
わたし 「ここ、大きな修道院ですね〜」
シスター「そうよ。大きい修道院(グランド・クヴァン)だもの」
わたし 「(日本語で)まんまっスね〜」
受付をしてくれた二人のシスターから、今日の宿泊者は私一人と聞かされる。
ドミトリー・ベッドの並んだその奥に、個室があったのでそこを陣取る。
荷物を整理し、洗濯を済ませ、セントル・ヴィル(中心街)へと散策に出る。
まずは観光案内所で、明日の宿を予約。
案内所のマダムが言うのは、明日行く予定のLacapelle Marivalにジットはない。
宿は星付きホテルのみ。
普段の三倍の値段になるが、朝食と夕食付きで予約した。
グラマの町のシンボルは羊らしい。
案内所の売店には羊のぬいぐるみも売られていた。カワイイ柔らかい〜!
とっても欲しかったけど荷物になるから泣く泣く断念。
さらに案内所の一隅には、プチ民族博物館まで設けられていた。
ここでも隠れ愛されキャラが笑っていた〜❤️
おまけ。
店に売ってたホワイト・アスパラ。食べてみたいが一本だけでは売ってくれない。
Dans la chapelle
修道院に戻って、教会へ。
マリア様に向かうと心がしんとする。祈りの時間が自分をクリアに戻してくれる。
部屋に戻って日記を書いていたらシスターが来た。
夜にもう一人、ここに泊まる女性が来るという。
その女性は近くの病院に療養に通っており、時々ここに宿泊しているのだそうだ。
「わかりました」と私は返答し、ラジエーターの上に広げた洗濯物を取り込んだ。
Le dîner
19時。夕食のため別棟へ行く。
ベトナムから来たというカトリック学校の学生たちが、大勢で廊下を駆けて行った。
みんなまだ十代前半の子供たちだ。
私は彼らの隣の部屋で、一人っきりで食事をした。
大声ではしゃぐ子供たちの声を聞きながら食べる夕食。
美味しかったけど、さびしかった。
前菜
肉料理
肉は羊だった。一人なのに5人分くらいの量。
チーズもたんまり。丸いのは、なんと「チーズ・イン・チーズ!」。
ちくわみたい。チーズの中に別のチーズが入ってダブル味。
全種類、ちょっとずつ食べる。食べきれない。
デザート
上にのっているのはリンゴ。下はクレープ包みのアイスクリーム。
この他に、もちろんパンも食べ放題、ワインもコーヒーも飲み放題。
残すのも申し訳なくて、たった一人でやばいほど食べてしまった。
(ちなみに朝食も込みで宿泊費は29ユーロ)
Bonne prière
食事の後、堂内を探検していると礼拝堂を発見。
礼拝時間は終わり間近だったが、シスターに頼んで入れていただいた。
「Bonne prière」と笑顔で言われ、いい言葉だとメモをとった。
Au dortoir
ぎゃああああああああ!
部屋に戻ってドアを開けたとたん、叫び声が轟いた。
叫び声の主は、スッポンポン(裸)のフランス人婆ちゃん。
どうやら彼女が後から泊まりに来た客らしい。
びっくりしたのはこっちだが、パードンと一応謝った。
彼女がどうしてスッポンポンになる必要があったのかわからなかったが、まあいい。
婆ちゃんも服を着ながら私に謝った。
スッポンポン婆ちゃんの名前はマルティーヌ。握手すると薬草のような匂いがした。
かなり高齢者の上に訛りが強かったので、話はほぼ聞き取れなかった。
でも私が日本から来て歩いていると言ったら、手をとって祝福の言葉をくれた。
彼女は病気が悪いらしかった。
自分はもう長くない、というようなことを、歌うような節まわしで何度も言った。
聞いているうちに、私はなんだか涙が出てしまった。(涙もろい・・・)
するとマルティーヌは私の涙を節くれだった手でぬぐい、突然歌を歌い出した。
知らない歌だった。
ジプシーの放浪の歌のような、ノスタルジックなメロディーだった。
なんの歌か尋ねたが、歌の名前は聞き取れなかった。
何度もトライしたが、ちっとも聞き取れない。
私が全く理解できないのを見て、彼女は前歯の欠けた笑顔でカラカラ笑った。
翌日。
マルティーヌはバッチリお化粧をして出発した。
ビビッドなグリーンの膝丈タイトスカートをはいていた。
昨夜のスッポンポン婆ちゃんからの〜大変身だった。
(恐ろしきかなフランス人マダム)。
出発前。
マルティーヌは部屋に掛けてあった十字架の上に、マリア様の写真を貼った。
それを見てまたびっくり。
マリア様の顔のド真ん中に鋲が打たれてあったのだ。
日本人の感覚では、絶対ない。
私は彼女が発った後、鋲をマリア様の顔面から外した。
そしてメンディングテープで写真を貼り直した。
さらに十字架の下に折り鶴を貼り付けて、手を合わせ祈った。