La Sainte-Baume ②
LA GROTTE
洞窟の中は薄暗く、ひんやりとしていた。
ゆらゆらと揺れるろうそくの灯りと、光を受けてきらめく美しいステンドグラス。
意外と広い内部は、そっくり自然の洞窟のまま、教会となっていた。
オレンジ色の服を着た数名の信者たちが、長時間、熱心に祈りを捧げていた。
何語だろうか。
時々囁かれる祈りの言葉が、エコーを伴って洞内に響いた。
そして絶え間なく流される涙のように、しきりと水がしたたり落ちる音・・・。
階段で下に降りると、可憐なマグダラのマリア像。
私が夢で会ったのは、彼女ではなかったか。
なぜだろう・・・。
不思議なくらい感動がなかった。
約束した通り、来るところに来た、そんな当たり前の、自然な対面だった。
私はロウソクに火を灯し、感謝を捧げた。
国王たちの道
戻りは〝国王たちの道〟を行く。
なだらかな斜面が心地よく続く。
途中、清冽な泉があった。
そのほとばしる一筋の水は、冷たくて甘くて、生きた水の味がした。
美味しくてゴクゴク飲んだ。
カミーノを歩いている時も、途中の泉でよく水を汲み、飲んだものだ。
その土地の水を飲むと、その土地の一部が体に入ってくるような気がした。
そしてそれは実際に、そうなのだ。
私は麓の修道院で二泊する予定だった。
明日もまたこの道を歩けるのだ!
明日はサンピロンの山頂まで行けるのだ!
ああ、なんて幸せなんだろう!
マルセイユで、アパルトマンの鍵が開かなくて泣いていたのが、遠い昔のよう。
途中ですれ違う数名の巡礼たちと、笑顔で挨拶をかわしながら、下山した。
17時。
雨と土の匂いがする、夕暮れの風が心地よかった。
疲れ知らずの私の足は羽が生えたように軽やかで、まだまだ歩いて行けそうだった。