Etape 1 Le Puy-en-Velay ~ Montbonnet
Etape 1 Le Puy-en-Velay ~ Montbonnet 16km
3月末、ルピュイの道を歩いているのは私一人。
誰にも出会わない。誰の背中も見えない。
スペインの時に比べて、なんという静けさ。
道を間違えないように私は、慎重に矢印を辿った。
空は晴れていたが、風は冷たかった。
私はレインスーツの下に、モンベルのプラズマ1000ダウンを着ていた。
おかげで体の熱は逃げなかった。
高かったけど買ってよかったと心底思った。
教会と十字架を見ると嬉しくなる。
またカミーノを歩いているのだという実感がわいてくる。
そしてやたらと祈ってしまう。
自分の足で歩けることに感謝する。
モンボネの宿はルピュイの観光案内所の電話から予約を入れていた。
パリで購入したFREEのSIMは、なぜか私のI Phoneに適合してくれず、
ネット環境も電話も制限されていたから、他力に頼ることにしたのだ。
16時、Montbonnetに到着。
宿の名前は『Gite de I'Escole』。
古い学校を改修したという手作り感満載のジット。
宿泊と夕食で27.90ユーロ。
この日泊まったのは私一人。
3月のルピュイは、巡礼シーズンにはまだ早かったのだ。
でも宿の主人マリーは、私だけのために暖房を入れてくれた。
ありがたかった!(一人だとコストに合わないため、暖房を入れない宿も多い)
残念だったのは、シャワーのお湯がぬるかったこと。
水じゃないだけマシだと思って浴びたのだが、これがいけなかった。
私は風邪をひいてしまったのだ。(これは翌朝気付くことになる・・・)
マリーの作ってくれたジャガイモとレンズ豆のスープを何杯もお代わりし、
デザートのタルトを食べ、ショコラを飲みながら、
遅くまでマリーと二人で話をした。
なんと言っても巡礼客は私だけ。
初日からフランス語のマンツーマン・レッスンである。
私のフランス語はひどいものだったが、話ははずんだ。
お互いの心が解放されていれば、思いは通じ合うのだ。
マリーは旦那さまと一緒に、カミーノを2度歩いたという。
フランス人の道と北の道。
北の道はとても美しかったと言っていた。
「北の道、私も歩いてみたいんだ」と私が言うと、「絶対行くべきよ」と笑った。
マリー「明日はどこまで行くの?」
わたし「Monistrol-d'Allier」
マリー「だったら宿は『Le Repos du Pèlerin』がいいわ、絶対」
わたし「あ〜予約したいけど、私の携帯、電話使えないの」
マリー「予約してあげる」
わたし「お願いしますッ!」
夜。
外に出てみると満点の星だった。
怖いくらいだった。
物凄い風が、凄まじい音を立てて吹いていた。
私は部屋に戻り、巡礼者のためのノートにお礼の言葉を書いた。
それから折り紙で鶴を折り、ノートの上に飾った。
朝食は頼んでなかったから、明日はもうマリーには会えない。
でもこの鶴を見たとき、笑顔になってくれたらいいなと思った。
風の音を聴きながら、私は眠りについた。