カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Le Puy-en-Velay 未来の声に導かれて旅をする

f:id:parasuatena2005:20191202170747j:plain 

 

Le Puy-en-Velay


 ルピュイのノートルダム大聖堂

朝のミサは小礼拝堂で行われた。

 

黒いマリア様の前で、敬虔にひざまづくシスターたち。

その後ろに、これから出発する巡礼たち数名。

 

ミサの後、司祭が巡礼を祝福し、問いかける。

「どこから来たの?」

ドイツ、ベルギー、アメリカ、フランス国内、日本(私)。

 

フランス人の、耳が聞こえにくい方々のグループが一緒だった。

手話で通訳が入る。

司祭がまた問いかける。

「英語とフランス語、どちらで説明を聞きたい?」

 

「英語」

という声が多かったので、残念ながら以後の説明は私にはよくわからなかった。

途中で失礼して売店へ行き、クレデンシャル(巡礼者手帳)を買った。

 

クレデンシャルに名前を記入して、日付を入れてもらう。

レジにいた若いシスターが、私の名前を見て驚いて言った。

 

シスター「あなた、MIKIって名前なの。日本人?」

わたし 「はい」

シスター「びっくり! 私の姪もMIKIっていう名前なの!」

わたし 「フランス人・・・ですよね?」

シスター「私の兄、日本が大好きでね。何度も行ってるの。

     それで日本のMIKIって名前がきれいだからって、娘に名付けたの」

わたし 「ほんとに〜?」

シスター「でもMIKIっていう名前の日本人に会ったのは初めて!」

 

思いがけない名前のシンクロニシティーが、嬉しかった。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170620j:plain Cathédrale Notre-Dame du Puy

 

 聖堂を出て、ルピュイの街を歩いてまわった。

今日の目的地は16キロ先のモンボネだったから、昼から歩き始めても大丈夫なのだ。

 

クリミア戦争時の大砲を鋳直して造られたという聖母子像は、この街のシンボル。

高さ16メートル。隆起した奇岩の上に堂々と立っていた。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170504j:plain   

 

そしてもう一つの奇岩の上に建つのは、

大天使ミカエルに捧げられたサン・ミシェル・デギュイユ礼拝堂。

あそこだ、あそこまで行かなくちゃ。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170827j:plain

Saint-Michel d’Aigullhe

 

f:id:parasuatena2005:20191202170956j:plain

 

長い階段を歩いて登り、美しいタンパンの前に出る。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170924j:plain

f:id:parasuatena2005:20191202170938j:plain

 

中に入る。

誰もいない堂内は静かで、ひんやりしていた。

古い時代のフレスコ画が美しい。

ロウソクに火をともし、祈った。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170905j:plain

f:id:parasuatena2005:20191202170832j:plain

f:id:parasuatena2005:20191202170857j:plain

 

神聖な空間。 

キリスト教が入ってくるずっと前から、ここは信仰の場だったのだ。

 

そういえば。

ノートルダム大聖堂にも古い時代のドルメン「熱病の石」があった。

病に苦しんでいた女性が、その石に触れることで治癒したという。

一説によると、彼女は聖母マリアを石の上に幻視したともいう。

それらはキリスト教が入ってから結びついた伝承かもしれない。

でもはるか昔から、「岩」「石」にこもるエネルギーを人々は感じていたのだろう。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170724j:plain     La pierre des fièvres

 

言葉を忘れるような自然の風景に出会う時、人は畏敬の念にうたれる。

そしてその場所を神聖化する。

 

そして人は祈る。

手を合わせる。

私も祈った。

私をここへ運んできたすべての巡りに、感謝した。

 

どうして「そこへ」行こうと思うのか?

それは「その場所へ行った未来」が呼ぶからだ。

私たちは未来の声に導かれて旅をする。

 

f:id:parasuatena2005:20191202170708j:plain

 

もう昼。

他の巡礼は誰もいない。

私はエピスリーでパンとオレンジと水を買った。

雑貨店で速乾性のTシャツと、ガイドブックも手に入れた。

 

そしてゆっくり、モンボネに向けて出発した。

 

f:id:parasuatena2005:20191130210903j:plain

にほんブログ村 旅行ブログ フランス旅行へ