Etape11 Livinhac-le-Haut ~ Figeac①
Etape 11 Livinhac-le-Haut ~ Figeac 28km①
カメラを向けるといつも笑顔でおどけるのはジャン・ピエール。
ベルナールはこの時、ピエールの少し先を歩いている。
青いリュックはクリストフ。コンクで出会った「ひがんだ」感じの青年だ。
途中で合流した私たちは、この日4人で歩いていた。
わたし 「昨日はよく眠れた?」
ベルナール「赤ちゃんみたいによく寝たな(comme un bébé)」
わたし 「(日本語)赤ちゃんかいッ!(爆笑してメモる)」
どこの場所か忘れてしまったが、休憩所を併設している教会があった。
そこで一緒に4人でお茶を飲んだ。
この時、私はクリストフと初めて会話した。
彼はものすごく早口でおまけに声が高いので、私にはほとんど理解できなかった。
ただ彼が私を嫌っているのではないことはわかった。
単純にコミュニケーション下手なのだ。
ベルナール「(クリストフに私を紹介)彼女はMIKIだ」
クリストフ「(早口でニコリともせず)知ってる。コンクで会った」
わたし 「クリストフはどこから歩いてるの?」
クリストフ「(つっけんどんに)コンク」
クリストフは薄手のガイドブック『MIAM MIAM DODO』を持っていた。
わたし 「あなたの本、見せて」
クリストフ「(無言で渡す)・・・」
わたし 「ロカマドール(Voie de Rocamadour)に行くの?」
クリストフ「(早口で)行かない。僕が行くのはセレだ(Voie du Célé)」
そのガイドブックには二つのルートが記されていた。
フィジャックからロカマドール経由でカオールへ行くルートと、セレ川に沿っていくルート。
今日の目的地、フィジャックは大きな町だからきっと本屋はある。
絶対手に入れようと思った。
4人で喋りながら歩くのは、一人で歩くのとは違った楽しさがあった。
ノーマルスピードのフランス語にはついていけなかったけど、構わない。
4人なら道を間違える心配もないし、犬に出くわしても平気。(いやだけど)
実際、私はすっかり犬が怖くなり、吠えられると足がすくむようになっていた。
だからこの日、みんなと一緒に歩くのは心強くて嬉しかった。
St-Jean-Mirabel
昼休み。
サンジャン・ミラベルの聖堂前で、それぞれが自分で用意したランチを食べる。
わたし 「マンダリン食べる?」
ベルナール「(取って、自分の缶詰を差し出し)サーディン食うか?」
ピエール 「俺、欲しい(と、取る)」
わたし 「・・・」
ベルナール「サーディンはいいぞ。栄養になる」
ピエール 「♪♪♪〜(歌いながらパンに乗せる)」
わたし 「私たち、コンクの聖堂でウルトレイヤを歌ったんだよ」
クリストフ「そう。司祭がアコーディオンを弾いて、みんなで夕食時に歌った」
ベルナール「日本では毒のある魚を食べるって本当か?」
わたし 「毒のある魚?・・・毒(poison)魚(poisson)?」←韻を踏んでる
ベルナール「魚(poisson)」
わたし 「あ、フグ。食べるよ!」
ベルナール「(びっくり)食うのか?」
わたし 「食う」
ピエール 「何ていう魚?」
わたし 「FU・GU」
ピエール 「(スマホで検索。音声が出る)FUGU。(自分で復唱)FUGU」
わたし 「でも料理人が料理する。(アクション)毒なし。問題ない」
ベルナール「すげえな日本人」
わたし 「酒もある。SAKE。ヒレ。焼く。火で(アクションするが説明不可能)」
わたし 「ピエール、あなたは今、ヴァカンス中? 仕事は?」
ピエール「(恥ずかしそうに)MIKI、僕は退職者だよ」
わたし 「 (日本語)え〜!嘘〜!(フランス語)だって若い!」
ピエール「若くないよ〜」
ベルナールは巡礼アプリとナビを携帯していた。
時々女性の音声で観光案内や道のガイドが自動的に入る。
ガイド 「フィジャックはこの先◯◯メートル左です」←そんな感じのことを言う
わたし 「それ、親切だね」
ベルナール「そう。このマドモアゼルは親切なんだが、少し喋りすぎる」
わたし 「(笑う)」
クリストフ「・・・(十字架の上に律儀に石を置く )」
わたし 「なんで石を置くの?」
クリストフ「(ふてくされたような早口で)tradition」
わたし 「トラディション(伝統)」
15時。フィジャックの町に入った。
ここからルートが三つに分かれる。
ロカマドールへ行くルートと、セレのルートと、GR65のルピュイのルート。
私たちはここで別れる事になるのだ。
クリストフ「僕はこっちだ」
わたし 「(手を差し出し)Bon chemin」
クリストフ「Bon chemin(握手)」
フランスはスペインと違ってジットが開く時間が遅い。
私の宿は16時オープン。ベルナールとピエールの宿は15時半だった。
わたし 「ベルナール、ジャン・ピエール。今日はどうもありがとう」
ピエール 「・・・」
間
ベルナール「MIKI、17時に俺たちは買い物に出る。一緒にコーヒー飲むか?」
わたし 「飲む! 一緒に買い物も行く」
ベルナール「よし。じゃあ17時に・・・(指差して)あそこで会おう」
わたし 「(指の先を見て)カテドラル」
ベルナール「Saint-Sauveur」
L'église Saint-Sauveur de Figeac
私は宿が開く前に本屋へ行って念願のガイドブックを買った。
GR65のルピュイ・ルートとロカマドール・ルートの『MIAM MIAM DODO』二冊。
明日からは本道から外れて、私は一人でロカマドールを目指すのだ。
ベルナールとジャン・ピエールとはもう会えない。
それを思うと切なくなった。
GUA
この日の宿は『GUA』。
リヴィニャックのジットでジャン・マリとエルディーが予約してくれた。
おすすめだと言っていたので従ったのだが、人気のジットらしく先客が数名いた。
いずれもフランス人。知らない顔ぶればかりだった。
洗濯をすませて、17時。私はサン・ソヴール聖堂に向かった。
聖堂前で座ってタバコを吸っている赤いジャケットの背中が見えた。
長い白髪が垂れている。ベルナールだ。
私は名前を呼んで、後ろから彼に抱きついた。
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