Etape9 Massip ~ Conques①
Etape9 Massip ~ Conques 22,5km①
小雨が降る中、歩きはじめて1時間。
止んだと思ったら、空に虹。
牧草地と山道を交互に歩む。
雄大なスペインの道と違って、ルピュイの道は単調だが繊細だ。
人は景色に育てられてしまう。風土が人格を形成してしまう。
歩く巡礼をしていると、日本にはない自然の肌ざわりに直接触れる。
世界は多様、価値観も多様。それでいいのだと芯からわかる。
Sénergues
セネルグの教会ではちょうどミサをやっていた。
入りかけたが、少人数だったから遠慮した。
また小雨が降ってきた。道は森に入り、上り坂となった。
その後しばらく単調な牧草地の中をゆく。誰にも会わない。
コンクが近づいてきた。
Conques
雨に濡れた石畳の道。聖堂の黒い屋根。コンク到着。
来た。・・・と、さすがに嬉しくなる。
『Centre d'accueil Abbaye Sainte-Foy』サントフォワ修道院附属のジット。
コンクに来たら、絶対ここに泊まりたかったのだ!
受付を手伝ってくれたのは、小柄なおじいさん、セルジュ。
ウェルカムドリンクのコーヒーを出してくれた。
それからジットについて、ミサについてなど、とても親切に説明してくれた。
一つ一つの対応に「まごころ」がこもっていたので、私は感激した。
ジットの部屋には先客がいた。
背の低い、痩せた、「ひがんだ」ような表情のフランス人男性。30代くらい。
私を見ても何も言わず、にこりともしない。
挨拶したら目を合わさず、ブスッとしたまま「Bon jour」と早口の小声で言った。
ちっとも「Bon」じゃなかった。そういう人もいる。
私は気にせず、窓際のベッドに自分の場を占めた。
コンク散策
雨の中、コンク散策。
この聖堂のタンパンは、中世ロマネスク様式の珠玉として名高い。
それから宝物館で金ピカの聖フォワ像などを見て唸る。
修道院に隣接したお土産屋さんでも物色。
実はず〜っと探している修道院プロダクトのオイルがあったのだ。
しかし、同じ銘柄のオイルはあれど、目当てのものはなかった。残念。
聖堂の裏でベルナールとジャン・ピエールに会った。わ〜いと抱きついた。
どうやら二人は、ずっと一緒に歩いているようだった。
ピエール 「今日どこに泊まるの?」
わたし 「Abbaye Sainte-Foy」
ベルナール「いい宿か?」
わたし 「いい宿だ!」
ピエール 「明日はどこまで行くの?」
わたし 「たぶんDecazeville!」
ベルナール「Decazevilleは良くねえ。やめとけ」
ピエール 「僕らはその先、Livinhac-le-Hautまで行くんだ」
それから私は、このところずっと考えていたことを彼らに相談した。
わたし 「私、ロカマドールへ行きたいの。何日かかるかな?」
ベルナール「そんなら一緒にコーヒー飲んで話そう、調べてやる」
私たちは近くのバールに入った。
二人は私のためにロカマドールへの行き方について色々調べてくれた。
ロカマドールは世界遺産登録された巡礼地であるが、ルピュイの道の途上にはない。
バリエーション・ルートなのだ。
断崖絶壁にあるディープな村なのだ。
そしてその地には「黒いマリア様」がいるのだ!
フィジャックから、どうやら列車が出ているらしい。
バスもある、とピエールが言う。行けそうだとわかるとワクワクしてきた。
二人と別れて観光案内所に行ったら、今度は途中でビルに会った。
ビルも同じジットに泊まっていると言う。じゃまたね、といって別れた。
観光案内所では、変な日本語の注釈がついた地図をもらった。
明日の宿の予約も済ませた。もちろん泊まるのはLivinhac-le-Hautだ。
それからジットに戻ると、なんとウルリケがベッドにいた!
思わず二人で抱き合った。
ウルリケ「昨日は辿り着けなかった。でも近道してここまでなんとかきたの」
わたし 「ウルリケ〜〜〜!」
それから、コンクの夜が始まった。
これがもう実にマジカルな一夜となったのだが・・・。
続きます。