Etape12 Figeac ~ Béduer
Etape 12 Figeac ~ Béduer 13km
朝早く、私はバスの発着場である鉄道駅まで歩いて行った。
時間はまだ早かったが、心配だったので下見を兼ねて出かけたのだ。
が、無人駅にはバスに関してなんの表示もなく、わからなかった。
と、中年の頬の赤いフランス人男性がいきなり声をかけてきた。
カオールまで行くから一緒に車に乗りなよと言う。
方向が違うからと断ると、カオール経由でロカマドールへ行くからと言う。
だがその男性からは怪しいオーラが出ていたので断った。
その後。
私は本当にそこがバス発着場か気になったので、観光案内所で確認することにした。
と、案内所へ行く途中で、懐かしい人と再会した。
ウルリケだ!
思わず二人、声をあげて抱き合った。
ウルリケ「お金おろしたいんだけどATMどこにあるか知らない?」←いきなり現実的
わたし 「まっすぐ行って橋渡ったら町の中心。銀行あるよ」
ウルリケの巡礼の終点はカオール。もう旅も終盤である。
わたし 「私はロカマドールへ行くの。バスに乗る」
ウルリケ 「あなたは歩くのが早いから」
わたし 「でもうまくいけばカオールで会えるかもしれない」
ウルリケ 「いいの、いいのよ(首を振る)」
私はウルリケのメールアドレスを教えてもらった。
もう二度と会うことはないだろう。そう思った。
ウルリケ 「日本に帰ったら連絡して。MIKI、Bon chemin!」
ウルリケの別れ際は見事だった。潔い。悲しみを見せない。
私は昨日、ベルナールたちと泣きながら別れた自分が恥ずかしくなった。
Office du tourisme
観光案内所で受付のマダムに尋ねると、バス停は駅ではなく別の場所だと言う。
発車時間も微妙に違っていた。
教わった場所へ行くと、確かにバスステーションがあった。
が、やはりなんの表示もない。
歩いていた人に尋ねたが、皆よくわからないと言うばかり。
渦巻く不安の中、私は時間まで目を凝らしてバスを待った。
・・・が、定刻になってもバスは来ない。
フランスだもの、日本じゃないから遅いんだ、そう思って20分待った。
・・・来ない。30分待った。
・・・来ない。
なんで来ないんじゃあああああ!!!!
急に腹が立った。私は観光案内所に戻って、マダムに文句を言った。
わたし「私はバスを待った。でもバスは来なかった。どうして?」
マダム「(あっさり)知らないわ」
わたし「・・・」
間
わたし「この時間から歩くとしたら、ここまでしか行けない。宿を予約したい」
マダム「Béduerね(私が指した地名をみて)・・・ちょっと待って」
マダムは、ガイドブックにはないオススメの宿に連絡してくれた。
が、留守電になっていて確認がとれない。
すぐ連絡が来るから座って待ってて、と言われた。
もうこうなったら、ゆっくり構えるしかない。
まもなく昼。私は観光案内所でくつろぐことにした。
宿の名前は『La Soursounette』。ここから13km。
予約がとれたので、一安心。私はゆっくり歩き出した。
しかし。今度はその宿の場所がよくわからなかった。
遠回りしたようで、あちこち彷徨い、いろんな人に教えてもらって到着した。
本当に巡礼中は人に頼ってばかりだ。
自力でどうにもできないことが多いから、他力にすがるしかない。
でもカタコトのフランス語で尋ねるからだろうか、フランス人はみんな親切だった。
La Soursonette
宿についたらひょろっとしたフランス人の男性が写真を撮っていた。
宿の名前を言って「ここですか」と聞くと、そうだと言う。
彼は先客。名前はジョエル。奥さんのブリジッドと一緒に歩いている。
宿のオーナーはベルギー人女性。とても明るくて親切だった。
私は彼女が出してくれたシロップ水を一気にごくごく飲んだ。
フランス人はシロップ水をよく飲む。
日本では絶対買わない系の甘い飲み物だが、フランスではなぜか飲んでしまう。
いろんな種類があってうまいのだ。
さて。部屋に入ったら、なんとベッドにジェニファーがいた。
私はロカマドール行きのバスが来なくて、行けなかったと彼女に説明した。
すると彼女はこう言った。
「カオールから行ったら?」
そうか。カオールから歩けばいいのだ!
私は彼女のアイデアを採用することにした。
そして彼女と不自由な英語で会話した。
彼女は日本の「マリーコンドー」をリスペクトしているという。
誰? わからないと言うと、ジェニファーは手で「お片づけ」のアクションをした。
「わかった! 近藤麻理恵! こんまりさんだ!」
ジェニファーはNetflixでこんまりさんの動画を検索し、私に見せた。
その時間は、やたら楽しかった。
頭の中から英語のかけらを振り絞って、私は喋った。
それからジェニファーは、3日後に行くであろう村「Vaylats」を教えてくれた。
そこには修道院がある。自分はそこに泊まると言う。
「修道院!」
情報を知らなかったら、絶対通り過ぎている村だった。
でも不思議と私もそこに惹かれた。そこに泊まろうと心に決めた。
その夜、ジェニファーのいびきはやはりすごかった。
私は気合を入れて寝た。