カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

Etape9  Massip ~ Conques②

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Etape9  Massip ~ Conques  22,5km①

 

夕食前に少し時間があったので、最上階のオラトリオ(黙想室)へ行った。

屋根裏部屋のような小さな空間。天井が低い。赤い絨毯が引いてある。

真ん中に、少女が手に貝殻を持って座っている小さな像があった。

フォワだろうか。ここには明日の朝また来ようと思って、私は食堂へと降りた。

 

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ウルトレイヤ!

 

夕食は大勢でテーブルを囲んだ。大賑わいだった。

「ひがんだ」ような背の低いフランス人も、向かいのテーブルに座っていた。

私の前には、ウルリケとビルが座った。

 

受付を手伝ってくれたセルジュが、笑顔で給仕をしていた。

ここでお手伝いしているのは、みんな年配者だ。ボランティアかもしれない。

 

私たちはワインを飲み、思い思いにパスタやサラダを食べ、スープを飲んだ。

それからアコーディオンの演奏で、巡礼者の曲『ウルトレイヤ』を大合唱。

楽しい!

 

わたし 「明日はどこまで行くの?」

ビル  「駅に行くんだ。僕はここから列車でサンジャン・ピエドポーへ行く」

わたし 「そうなの?」

ビル  「それからまた歩いて、サンチャゴへ行く」

わたし 「じゃ今日でお別れだ! (ウルリケに)ビルは明日駅に行くんだって!」

 

私はスペインルート(フランス人の道)でおすすめのアルベルゲをビルに伝えた。

カタコトの英語で、一生懸命私はビルに説明した。

ビルも一生懸命、メモをとりながら聞いてくれた。

 

しばらくして、司祭がウルリケに何かを頼みにきた。

ウルリケは承知した。そして私を司祭に紹介して言った。

 

「彼女は日本から来たのよ。それなら彼女にもやらせてあげて」

 

司祭はうなずき、ゆっくりスピードのフランス語で私にも依頼した。

こういう内容だった。

 

食後に聖堂で巡礼者のためのミサがある。そこで聖書朗読をする。

あなたには母国語で、その同じ詩句を読んで欲しい。日本語の聖書も用意します。

私は承知した。

  

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Bénédiction des pèlerins

 

ミサは進行し、私たちは聖歌や詩句を一緒に唱和した。

それから三人の巡礼の名前が呼ばれた。壇上に上がってくれという。 

私とウルリケと、フランス人の若い男の子が壇上に登った。

 

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司祭が読み上げたのと同じ詩句を、まずはフランス人の男の子が読んだ。

それからウルリケが続いた。

格調高い、朗々としたドイツ語の朗読だった。

意味はわからないけど、彼女の朗読のレベルの高さはわかった。感動した。

そして私の番になった。

 

・・・読もうとして、絶句した。

ものすごく変な日本語なのである!

 

なんじゃあ・・・この翻訳はあああああ!

 

こんなの読めないよおおおお!

いや、この変な翻訳のまま読んだとしても、私以外誰も気が付かないだろう。

しかし、私が気持ち悪いッ! 読めませんよ、こんなのッ!

 

私は瞬時に正しい日本語に直しながら、朗読した。

「聞け、イスラエルの民よ」で始まる、申命記の一節だった。

私の声が聖堂に響いた。みんなが聞いている。

日本代表になったような気分だ。

なんだか夢の中のような、不思議な時間だった。

 

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ミサの後、巡礼はサンチャゴの像のところで祈り、送り出された。

司祭はマルコの福音書のフランス語版をみんなにくれた。

 

その後、聖堂の前で一般客向きのガイドツアーがあった。

司祭が正面入口上部に刻まれたタンパンの説明をするのだ。

これがものすごくエンタメだった。司祭、話術、うますぎッ!

 

司祭は音速や音程の変化を駆使し、巧みに「最後の審判」の説明をしてくれた。

みんなはひきこまれ、大いに爆笑した。(そんなに笑える内容なのかッ!)

頭上は満点の星。ライトアップされた大聖堂がミステリアスに光っていた。

 

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ガイドツアーが終わって、ジットに戻る。22時半。

ツアー客に紛れ込んで話を聞いていた巡礼は、私だけだったらしい。

みんなもう寝ている。私は静かに寝袋に入った。

  

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