カミーノ ことばの巡礼  

深いところで私を変えたカミーノ巡礼。記憶を言葉に還していきます。

2018-01-01から1年間の記事一覧

巡礼31日目② すべては完璧に順調に進行している。たとえ私の目にそうと映らない時でも。

巡礼31日目② サンタ・イレーネ 二段ベッドの上段で昼寝から覚めた。 下段はイヴだが、ベッドにはいなかった。 横のベッドにピンクのTシャツを着たかわいいペリグリーノがいた。若い女の子だ。 履いているスパッツはド派手なグリーンとピンクのボーダーだっ…

巡礼31日目① 「サンチャゴに着くために君は靴を洗ったの?」「私の美学」

巡礼31日目① リバディソ → サンタ・イレーネ 日の出はいつも祈りの時間。 今日も歩かせていただけることに、私は手を合わせて感謝する。 祈るとき、いつも私の肩に手を置いて、イヴは何を考えていたのだろうか。 右手に太陽、左手に月が同時に出ている巡礼…

巡礼30日目② どんなに私が涙を流しても、世界は相変わらず優しくて美しいんだよ、カミーノ。

巡礼30日目② パラス・デ・レイ → リバディソ・ダ・バイショ 「僕のナイフが返ってきたよ」 イヴが嬉しそうにそう言った。 歩いている途中で、一人のペリグリーノがイヴを呼びとめてナイフを渡してくれたのだ。 イヴがそれを使っていたのを覚えていたらしい…

巡礼30日目① あなたは愛される資格があるのよ。価値があるのよ。・・・愛されなさい!

巡礼30日目① パラス・デ・レイ → リバディソ・ダ・バイショ イヴと意志の疎通が上手くいかない。 言ってることがよく分からない。 時々、空気の読めないイヴが嫌になる。勝手なものだ。悲しくなる。 互いに勝手な行動をとる。イヴが少し腹を立てたように感…

巡礼29日目 君たちはここで僕の作った料理を食べるか、外で食べるかだ。

巡礼29日目 ポルトマリン → パラス・デ・レイ 「僕はアルベルゲにナイフを忘れてきた」 イヴが言った。でもポルトマリンまではもう引き返せなかった。 今日もたくさんのペリグリーノとすれ違う。 先生に引率されたスペインの中学生? 犬を連れた巡礼。子ど…

巡礼28日目 オリーヴをくわえた鳩を見て、ノアは洪水の終わりを知った。

巡礼28日目 バルバデロ → ポルトマリン イヴは相変わらず体調不良。朝も食べなかった。 私は元気に歩いていた。ポルトマリンの教会に行くまでは。 わたし「この木はなに?」 イヴ 「Olive・・・Thym・・・ Laurier」 ポルトマリンの教会では、木の枝を持っ…

巡礼27日目 カミーノは銀河の真下に横たわり、大空にある星々から流れ出しているエネルギーを反映するレイラインに沿っている。

巡礼27日目 サモス → バルバデロ これから書くことは信じられないことなので、信じなくていいです。 ただ、私にはそう感じられる。だから、書いておく。 カミーノを歩いているのは人間の体だけではない。 その体をカミーノに来させた、すべての縁起が体と…

巡礼26日目② サモスの月

巡礼26日目② オスピタル → サモス イヴ 「ごめん。僕はまちがえた」 イヴがフランス語のガイドブック『Miam Miam Dodo』を手にして、笑顔で言った。 私は休憩したかったし、トイレにも行きたかった。 でもイヴに「もうすぐアルベルゲに着くよ」と言われ、…

巡礼26日目① 牛や馬が普通にガンガン通り過ぎて行く。どんなにがんばっても、糞を踏まずに歩くことはできない。

巡礼26日目① オスピタル → サモス オスピタルを出てしばらく歩くと、山道は下りになった。 途中にあった村のティエンダ(売店)で、お気に入りの手袋をようやくゲット。 本体と手の甲だけの部分に別れるタイプのもので、 パステルピンクと水色のコンビネー…

巡礼25日目 私がお前を愛しているかどうか、私は知らない。

巡礼25日目 トラバデロ → オスピタル・ダ・コンデサ わたし「いままで登った山で、どこが一番きれいだった?」 イヴ 「一番というものはない。山はどれもきれいだ」 オ・セブレイロを越える。 紫のヒースの花が咲く山道。 頂上近くでは雲海が立ちこめてい…

巡礼24日目 ありふれたすべてが、ありのまま、うつくしかった。

巡礼24日目 カンポナラジャ → トラバデロ 鮮明にその村のことは覚えている。トラバデロ。 木々の緑。空の青。午後の光。川音。 色あざやかな花たちが小さな村に溢れていた。 私はその景色と一つになって歩き、光を浴びた。 ・・・その村に着いてすぐのこと…

巡礼23日目③ 日本ではこれ、コットン・シャポーって言うんだよ。

巡礼23日目③ カンポナラジャ ふたり一番乗りでアルベルゲに到着。まずは腹ごしらえ。 トルティージャにボカディージョの王道。やすい&うまい。 近くにスーパー「Dia」を発見。このスーパーマーケットは安いのだ。 早速、飲むヨーグルト(1ℓ)をゲットしに…

巡礼23日目② ベネディクスィヨン!

巡礼23日目② リエゴ・デ・アンブロス → カンポナラジャ ぽかぽか陽気の中、まっすぐな道が続いていた。 桜、椿、木槿・・・いろんな花が満開だった。 道すがら、イヴが桜の枝を折って私にくれた。 気持ちは嬉しかったが、ためらいなく折ってしまう無神経さ…

巡礼23日目① ポンと山越えてポンフェラーダ! 僕は鳥になって飛んでいこう。

巡礼23日目① リエゴ・デ・アンブロス → カンポナラジャ 暗い山道に鳥の声だけがしていた。急峻な下り坂が続いた。 岩場のようなところを降りたり、木々をかき分けたり。 一人しか進めない細い道では、私が先に行き、イヴが後に続いた。 手袋をしていない指…

巡礼22日目③ サクラ。ミモザ。鳥のさえずり。青空と土。レンガ色の壁に飾られたホタテ貝。路傍の聖母マリア。

巡礼22日目③ リエゴ・デ・アンブロス 満開のミモザが私たちを出迎えた。 黄色い天使が羽を広げたようだった。 あまりの美しさに、村の入口で私とイヴは立ち止まった。 ミモザの花の向かいに小さな泉があった。 そこで私たちは水を汲んだ。 「オラー」 ペッ…

巡礼22日目② 焼き尽くす愛の力によって、大地は確かによみがえりつつあった。

巡礼22日目② サンタ・カタリーナ → リエゴ・デ・アンブロス フォンセバトンから屋根の色が黒に変わった。 地面の色と壁土と屋根の色はリンクしていて、その土地の特色が現れる。 村の入口に、大きな十字架が横倒しになっていた。 道の脇には、二人の作業着…

巡礼22日目① 僕は彼との思い出を、本当に思い出にするために歩いてるんだ。

巡礼22日目① サンタ・カタリーナ → リエゴ・デ・アンブロス 朝。金星が輝く巡礼道はまだ暗く、肌寒かった。 買ったばかりのストック(杖)を片手に、私はイヴと歩き出した。 手袋のない私の手は、冷たくかじかんだ。 ペリグリーノはたいてい、ストックを二…

巡礼21日目③ Merci beaucoup pour aujourd'hui(今日もどうもありがとう)

巡礼21日目③ サンタ・カタリーナ・デ・ソモサ 「夕食は僕が払うよ」 イヴが(フランス語で)そう言った。 サンタ・カタリーナのアルベルゲはレストランを兼ねていた。 44キロ歩いて、このアルベルゲに辿り着いたとき、もう私はくたくただった。 いつもな…

巡礼21日目② ぼくたちが今向かっているのは、美しくて有名な村だからね。

巡礼21日目② マサリフェ → サンタ・カタリーナ・デ・ソモサ アストルガに着いたのは13時過ぎ。 町に入ったはいいが中心街までなかなか辿り着かず、気持ちが焦った。 14時からシェスタだ。シェスタには店が閉まってしまう。 私はどうしても杖が欲しかっ…

巡礼21日目① 前を歩くペリグリーノがいると、君は追い越そうとしてペースが早くなる。

巡礼21日目① マサリフェ → サンタ・カタリーナ・デ・ソモサ 私の大好きな一枚の写真。 オルビゴ橋を歩いていくイヴの後ろ姿。 彼のペースはいつも一定で変わらなかった。 足の長さが違うから、私たちの歩幅は違っていたはずだ。 でも結果的に私たちの歩く…

巡礼20日目② 世界は別れに満ちている。だから今そばにいる誰かを大切にしたくなる。

巡礼20日目② ビジャル・デ・マサリフェ そのアルベルゲの壁には、各国のペリグリーノたちの言葉が書かれていた。 男女で部屋が別れていたので、イヴと私は初めて別々になった。 二階の奥は改装中らしく、工事の人たちが行ったり来たりしていた。 「あとで…

巡礼20日目① カミーノ・マジック。偶然という形の必然。日常の中にある恩寵。

カミーノ巡礼20目。レオン大聖堂にて。カミーノ・マジック。アンニュイな彼女との偶然の再会。日常の中に恩寵がある。

巡礼19日目 自分が歩きたいように歩こう、これは私のカミーノだ。

巡礼19日目 ブルゴ・ラネーロ → アルカウエハ 3月31日。桜の花が一気に咲き始めていた。 フランス語でサクラは「cerisier」という。 スペイン巡礼しながら、私は今日もフランス語のレッスンだ。 わたし「cerisier・・・って、féminin?masculin?(女性…

巡礼18日目② Camino is international! Camino is Babel!

巡礼18日目② ブルゴ・ラネーロ 「I love coffee! Life is coffee!」 アルベルゲで一緒になったイタリア人ペリグリーノはコーヒー片手に熱く語った。 彼はコーヒー・ディプロマだという。 「Coffee is art. Coffee is love!」 「君は知ってるかい、HARIO…

巡礼18日目① コウノトリは幸せを運ぶ鳥です

巡礼18日目① テラディジョス → ブルゴ・ラネーロ 「Tu as bien dormi?(よく眠れた?)」 朝。起き抜けにイヴが私の頭を撫でながら聞いてきた。 え〜っと「よく寝た」は、J'ai bien dormi? 動詞はavoirでいいんだっけ? 私がまごまごしていると、さらに聞…

巡礼17日目 今日、目の前にいる人は、明日は会えないかもしれない・・・。

巡礼17日目① カリヨン→テラディジョス・デ・ロス・テンプラリオス 早朝。カリヨンを出発し、麦畑を抜けると川に出た。 私とイヴの前を一人の小柄な巡礼が歩いていた。 まだ肌寒いのに半袖を着ている。そして髪の毛があっちゃこっちゃ跳ねている。 寝グセ頭…

巡礼16日目② ウルトレーヤ!

巡礼16日目② カリヨン・デ・ロス・コンデス ペリグリーノ・ミーティングにて。 三人のシスターが楽器を奏でて、配布されたプリントの歌をみんなで歌った。 スペイン語の歌、英語の歌、フランス語の歌。 それから順番に自己紹介をした。 巡礼している理由も…

巡礼16日目① 時々、人生はとてもひどい。でも、それでも世界は美しい。

巡礼16日目① ボアディジャ → カリヨン・デ・ロス・コンデス 「Regarde, ・・・cigogne!(見てごらん、コウノトリだよ!)」 カリヨンへ向かう途中、イヴが私の肩を引き寄せて言った。 教会の屋根の上に、コウノトリの巣があった。 二人立ち止まって、しば…

巡礼15日目 僕は歩くマシーンになる。景色と僕は一つになる。僕は道になり道は僕になる。

巡礼15日目 オンタナス → ボアディージャ・デル・カミーノ オンタナスを出て1時間ほど歩いたところに、サン・アントンの修道院跡があった。 その壁に触れると、心がしんとした。 朝の空気が澄んでいたからだろうか、自然と神聖な気持ちになった。 アルベ…

巡礼14日目 カミーノは不思議な道だ、必要なことが必要な時に起こるように準備されている

巡礼14日目 タルダホス → オンタナス カミーノ巡礼道では小さな村でも教会があり、村の入口か出口には墓地がある。 「スペインの人たちはフランス人より信仰が厚い」フランス人のイヴは言う。 「フランス人はあまりミサに行かない。でもスペインの人たちは…